2009年11月21日土曜日

林不忘と藁谷達


2010年1月31日まで、いわき市立草野心平記念文学館で「ふくしまの文学展 浜通り編」が開かれている。浜通りゆかりの作家・詩人・歌人・俳人・柳人50人を紹介している。

10月初旬のオープン直後に、丹下左膳の作者・林不忘のことについてちょっと触れた。丹下左膳は浜通りの北方、相馬藩の家臣だった――。大河内伝次郎ふんする映画で、団塊の世代にもなじみのヒーローが「相馬藩士」というのは、原作を読んでいないので“発見“だった。

林不忘は本名・長谷川海太郎(1900~35年)。牧逸馬の名で探偵小説を、谷譲次の名前で「めりけんじゃっぷ」物を書き分けたという。なかなかの異才だ。35歳でこの世を去るが、いくらなんでも早すぎる。持病の喘息(ぜんそく)の発作が死因だったらしい。

末弟に「シベリヤ物語」を書いた長谷川四郎がいる。こちらは17歳のときに知った。スペインの詩人フェデリーコ・ガルシャ・ロルカの詩の翻訳者として。日本語がこなれていて、今でもそらんじている(と思ったら、ざるから水がこぼれるようにうろ覚えになっていた)詩がある。〈水よ おまえはどこへいく?〉。私が水や川を意識して見るようになった原点、と言えばいえる。

マルチ作家・長谷川海太郎は、谷譲次としてはユーラシア大陸を旅したルポルタージュ「踊る地平線」がある。北欧について書いていることが分かった。岩波文庫から上下巻が出ているので、早速注文した。とりあえず、総合図書館から長谷川海太郎の評伝『踊る地平線』(室謙二=晶文社)を借りて読み始めた。

「ふくしまの文学 浜通り編」展では、「シベリア抑留」をテーマにした記録文学、藁谷達(さとる)の『憎しみと愛』に衝撃を受けた。

ようやく手に入れた図録代わりの紹介文コピー=写真=によると、藁谷達(1919~70年)はいわき市小川町生まれ。終戦後、ソ連に抑留され、収容所で強制労働を余儀なくされた。帰国後は高校教師になり、昭和45年、学園紛争の対応中に急死した。

〈収容所〉物としては、この言い回しが自分でも嫌いなのだが、フランクルの『夜と霧』、大岡昇平の『俘虜記』、ソルジェ二ツィンの『イワン・デニソヴィチの一日』などがある。長谷川四郎の『シベリヤ物語』もこの範疇に入る。

これらを全部、手元に置いて読みつないでいる。『憎しみと愛』に触発されたからにほかならない。極限状況の中での人間性について、いや人間性の極限について深く考えさせられる作品ばかりだ。

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