2010年9月27日月曜日

白千層


街路樹にはいろんな種類がある。とはいっても、旅人がその街とともに記憶する街路樹は一つか二つだろう。札幌ならナナカマド、仙台ならケヤキ、大分ならクスノキ、ヨーロッパならマロニエ……。旅人の行動範囲は狭く、一過性だ。その限られたなかで目に入った街路樹しか記憶に刻印されない。実際にはかなりの数の樹種が植えられているはずである。

日常接しているわがいわき市の街路樹を見れば分かる。それこそ種々雑多だ。思いつくままにあげれば、ハナミズキ、ユリノキ、ケヤキ、マテバシイ、ハクモクレン。ほかにも私の知らない樹種がある。シュロ(鹿島街道)なんかもある。

台北(台湾)の街路樹は、むろん初めて見る木だった。ガイドの話では、ガジュマルがある。どれがガジュマルなのかは分からなかった。幹が白くねじれたような木が並んでいた=写真。花も咲いていた。「白千層(はくせんそう)」だという。

台風の直撃を受けて台湾南部への新幹線の旅が中止になり、代わって台北市内の温泉につかったり、買い物をしたりしたあと、ホテル周辺を散歩した。「白千層」の幹にさわった。樹皮は紙のように薄い。それが何枚も重なっている。雨にぬれたためか、樹皮のかたまりは少しふやけた段ボールのようだ。弾力もある。

白く薄い紙が千枚も層をなしている――そんな印象から「白千層」と名づけられたのだろう。これも不思議な木の一つと言っていい。

常緑だそうだ。ということは、美観のほかに日よけの役目もあるに違いない。なにせ亜熱帯の街である。日中は寝て暮らしたいくらいの暑さが続く。日陰がなければ外歩きも難しい。植物も同じで、「白千層」は暑さにも、雨にも強いのだろう。

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