2010年9月23日木曜日

高温多湿


作家埴谷雄高は台湾の新竹で生まれた。詩人まど・みちおは台北工業学校土木科を出て台湾総督府道路港湾課に勤めた。詩人工藤直子は朴子で生まれた。

北の台北から南の高雄へと西海岸の平野部を新幹線が走っている。台北南西の新竹も、高雄の手前、北回帰線に近い朴子も、その平野部にある。台湾新幹線に乗れば、車窓に映る風景とともに、埴谷雄高が、工藤直子が吸ったのと同じ空気を吸えるだろう。そう期待して台湾に入ったが、台風11号の直撃で新幹線が運休し、高雄行きは中止になった。

そのことは、きのう(9月22日)書いた。きょうは、吸えなかった土地の空気も含めての話。

台湾は広葉樹の葉っぱのような形をしている。北部は亜熱帯、南部は熱帯。葉柄に連なる葉の基部、そこに高雄がある。熱帯だ。熱帯の空気というのはどんなものなのだろう一―。一番期待していたが、それはかなわなかった。

が、飛行機を降り、桃園国際空港のターミナルビルを出ようとした瞬間、強烈な亜熱帯の“洗礼”を受けた。自動ドアが開くと、いきなり温風に包まれたのだ。高温多湿、しかも台風11号の先触れで風が強い。時々、雨も降る。

高層ビルが立ち並ぶ台北市街=写真=への道すがら、チャーターしたミニバスから家並みを眺めていたら、男性はたいがいランニングシャツか半袖シャツに半ズボン、といういで立ち。家にエアコンなどがなかった「昭和の日本の夏」と同じ光景だ。

日本の夏も高温多湿になるとはいえ、どうも多湿のレベルが違う。湿り気を帯びた空気が重い。重い上に暑い。曇っていてそうなのだから、晴れた日はもっときついだろう。

3泊4日の旅の最終日。初めて青空が広がった。朝食後、ホテルの近くを散歩した。ビルの1階部分は人の通行ができるよう、アーケード状になっている。出勤途上の人が慌ただしく行き交っていた。

公園に出て、直射日光を浴びて分かった。ビルの1階がアーケード状になっているのは、ガイドの話では梅雨の雨対策だが、日よけの意味もあるのだ。雨対策と日よけ、そこから台湾の生活文化を見ると面白いか。

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