2011年9月15日木曜日

「復興ビジョン」市民集会


「いわき市復興ビジョンへの提言(素案)」について考える市民集会が9月13日夜、いわき明星大で開かれた=写真。いわき地区NPOネットワークが主催した。

8月下旬に、市復旧・復興計画検討委員会が5回の会議を経て提言をまとめた。地元のいわき明星大、東日本国際大、福島高専と、郡山市の日大工学部、県外の筑波大から各1人、それにいわき商工会議所会頭、市立総合磐城共立病院事業管理者(東北大名誉教授)の計7人が委員を務めた。

市民集会にはスタッフも含めておよそ40人が参加した。まず、検討委員会の委員を務めた遠藤寿海東日本国際大教授が会議の経過を踏まえて提言(素案)の目的・理念などを説明し、事務局が細かく内容を紹介した。このあと、参加者が意見を述べた。

素案の内容を確認し、市民の目線で見たときにどんな課題があるのかをみんなで考えよう、というのが市民集会の目的で、ケチをつけるための集まりではない。よりよい復興ビジョンとするために、市民の意見(パブリックコメント)を出していこう――これが狙いでもある。パブリックコメントはきょう締め切られる。

事前に寄せられた意見がまず紹介された。①「新しい公共」という概念に関する言及がない②高齢者や障がい者に関する言及がほとんどない③観光と一次産業を切り離して考えるのではなく、むしろ一体となって復旧・振興を進めるべき。いわきの食品が完全に安全にならないと観光にもつながらない――。

目的・理念は良いことづくめだから、「その通り」「異存はない」となりがちだが、それぞれの専門の目を通すと足りないところだらけ、ということがわかる。パブリックコメントは、骨格の否定ではなく筋肉の増強・追加だ。

検討委員は知識人かもしれないが、全員がいわき市に根を張って暮らしているわけではない。住んでいるとしても、いわきを知り尽くしているわけではない。市民の目線からみれば、これを加えたい、あれを加えたいとなるのは自然の成り行きだろう。

では、次に会場から意見を――となって、司会が突然「目が合ったものですから」と、目が合いもしないのに私に振ってきた。

事前に寄せられた意見の感想として、素案には足りないところがあることを述べ、一例として理念4、「本市は、日本ひいては世界のために、収束を目指す原子力災害対応の拠点地域……」のくだりについて、原発は何のためにあったのか、東京のためにあった、そういうことを明記すべき、ということを述べた。

いわきは、いうならば「東京の“北のトリデ”」である。そういう役割を果たしていることを、東京は果たしてわかっているのか。わかっていないという思いが、原発は何のためにあったのか発言になった。

それはさておき、会場からは「スピードを上げて復旧・復興を。中でも学校の再開など、優先順位をつけてやってほしい」(豊間)「築200年、300年といった家が解体撤去される運命にある。文化財として残すような対応はできないものか。沿岸部に温かい手を差し伸べてほしい」(江名)といった意見が出された。

とにもかくにも「復興ビジョン」づくりに向けて市民集会が開かれた。そのこと自体に意義があった、と私は思う。

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