2011年9月1日木曜日

断層だらけ


いわき地域学會の仲間から、立て続けにいわきの断層の話を聴いた。相手はいわきの鉱物や地質・化石などの研究者だ。日ごろからいわきの大地に関心をいだき、現場を巡り歩いている。

3・11の巨大地震の影響で、4・11にいわき市の「井戸沢断層」近く(田人)でマグニチュード(M)7.1の地震が発生し、それまでは「動かない」とされていた東隣の「湯ノ岳断層」(遠野~常磐)が動いた。田人・遠野・常磐には「地表地震断層」と呼ばれるものが出現し、各地で崩落事故が発生した。

翌4・12には井戸沢断層の北側、同じ東経線上でM6.3の地震が発生した。行政区としては、田人でなく三和が震源地ではなかったか。

以来、震源地が「福島県沖」でなく「福島県浜通り」だと、いわき市南部という前提でチェックする癖がついた。気象台のHPをのぞけば、震源地の緯度・経度がわかる。いわき市の場合は田人・遠野・三和などの南西部に集中している。当然、そちらの震度も大きい。

内陸部で地震が頻発している以上、いわきの大地を研究対象にしている人たちは、断層についての意識を研ぎ澄まさないではいられない。

いわきの代表的な断層ともいうべき「二ツ箭断層」=写真(二ツ箭山中「奥の院」近く。花崗岩にはさまれて破砕帯が見える)=も動いているようだ――震源地をマップに落とせば、容易に想像できることだ、というのが話の結論だった。

きのう(8月31日)の新聞は、電力会社が原発周辺の活断層を評価し直したが、耐震安全性に問題はないとする見解を発表した、という小さな記事を載せた。福島第一・第二原発の場合は、五つの断層が動く可能性を否定できない、という。

これは大変なことではないか。動かないはずの断層が動き、近接する断層も押し合いへし合いのバランスが崩れて連鎖的に動いている。いわきに住む人間としての反応だが、マスメディアにはその危機感が欠落している。こちらはその五つを具体的に知りたい。なのに、記事は「『湯ノ岳断層』を含め五カ所」とそっけない。東京発だから、だな。

しかたない。東電の資料をネットで検索した。その結果、東電は①畑川断層②二ツ箭断層③八茎断層④湯ノ岳断層⑤敷地南東海域の断層――の五つについて、「耐震設計上考慮する活断層に該当する可能性が否定できない」としていることがわかった。ただし、「いずれも基準値震動を超過しないことを確認した」。耐震安全性に問題がない、というのはこのことだったか。

むかし編集した『夏井川流域紀行』(1989年、いわき地域学會出版部発行)に高橋紀信さん(現いわき地域学會相談役)の「断層と段丘」が載る。

「夏井川に沿う断層では、二ツ箭断層が最もよく知られている。この断層を境にして南側が沈降し、北側が隆起する運動が数百万年前に始まり、現在もその動きを止めていない。/二ツ箭とそれに連なる峰々は、このような運動によってつくりあげられた。/(略)夏井川の深い谷は、断層線に沿って浸食が進んだ結果できたとみるのが自然である」

この谷の延長方向、阿武隈の山を越えたところに「小町温泉」(田村郡小野町)がある。高橋さんは「小町温泉はこの断層線に沿って地下深いところから湧き出たものであろう」と推測する。

さて、その断層群だ。いわきの南から北へと断層が動きだし、「二ツ箭断層」の東隣の「八茎断層」も、相双地区の阿武隈高地東縁を南北に走る「畑川断層」も動いている。原発に最も近い「双葉断層」は「畑川断層」に並行するようにして走っている。近接する断層が動いている以上、ここだけ不動のはずがない。

いわき市は、いや浜通りはそれこそ「大地動乱の時代」に入った。

わが家は、茶の間や床の間、玄関の壁が土を主成分にしたものでできている。移り住んだとき、知り合いの左官屋に頼んで表面だけ塗りなおした。大きな余震があるたびに、壁の隅がぽろぽろこぼれ、縦に入った亀裂も明瞭になる。家も、ボデーブローを食らったように、少しずつ疲弊しているようだ。

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