2011年10月29日土曜日

スズメが台所に


昼前、台所で水を飲もうとしたら、かすかな羽ばたき音がする。天井を仰ぐと、スズメがいた。出口を探して、何度も行ったり来たりしている。

いい天気になったので、茶の間のガラス戸を開けておいた。そこから家の中に入り込んだのだろう。台所まで進入したのはいいが、ただただ北側の食器棚から南側のガラス戸へと、飛んでは舞い戻る。あわてふためいているのか、隣の茶の間から外へ飛び出す余裕はない。天井を見上げて思案中のところをカメラに収めた=写真

台所のカーテンとガラス戸を開けて逃げ道を用意してやる。ところが、そばに人間が立っているものだから、怖くて近寄らない。そのうち、やっと茶の間に気づいてそちらから大空へと消えた。

大震災以後、出てきた本に室生犀星の『動物詩集』がある。戦時下の昭和18年に発行された。義父か伯父かが持っていたか、あるいはどこからかめぐりめぐってやってきたものに違いない。買った記憶はない。序文にこうある。

「いろいろな動物の生活を見てゐると、どういふ生きものにも私たち自身の生きてゐる有様が、ところどころに見られる。/動物がびっくりする時や喜ぶ時にも、私たちのびっくりしたり喜んだりする、こまかい有様を見ることが出来る。いのちといふものを動物のなかに見てゐると、どういふ下等な動物でもいのちを大切にまもるために、飛んだり逃げたりすることが分ります。」

「飛んだり逃げたりする」ために、天井を見上げて思案中のスズメは、まさに腕組みをし、天を仰いで考えごとをしている人間と同じではないか。

『動物詩集』には「夏の雀のうた」が入っている。<あつくなると/雀のあたまも黒くなる。/雀もきつと/あつい日にやけるのでせう。/雀はあんまりあついと/からだがかゆくなつて/水で羽根をさうぢをする。/雀のあしはあかだらけで/おうちで/あしがきたないといつて/しかられてゐるのだらう。>

スズメの写真を拡大したら、脚に綿ごみがいっぱいついていた。「あかだらけ」どころか綿ごみだらけだ。家に帰ればしかられるに違いない。

0 件のコメント: