2012年10月12日金曜日

溪谷のセイタカアワダチソウ


夏井川渓谷の秋にそぐわない色がある。十何年か前に帰化植物のセイタカアワダチソウが咲いた。ヨシ原が一度刈られ、放置されたあと、瞬間的に根づき、花開いたのだ。それ以来だろう、セイタカアワダチソウの黄色い花に気づいたのは=写真

自分の記録に当たったら、無量庵の下、岸辺のヨシ原が刈り払われたのは1998年だった。無量庵の対岸に水力発電所を持つ東北電力が、尾根筋の送電鉄塔を高くする工事をした。川をはさんだこちら側、ヨシ原が資材置き場になった。ヘリコプターが現れ、ホバリングをして資材を運ぶのを、無量庵から眺めた。V字谷ゆえの、曲芸的な作業だった。

工事が終わった翌年、資材置き場はススキが伸び、ヨシもちらほら生えて「ボサ」(灌木などが生えた草むら)になった。さらに次の年には元のようにヨシが優先し、間にセイタカアワダチソウが黄色い花を点々とつけた。セイタカアワダチソウは翌年、ヨシに埋没して姿を消した。

無量庵の隣に「錦展望台」がある。所有者が古い家を解体し、谷側の杉林を切り払って行楽客のビューポイントにした。道路をはさんだ山側の杉も伐採した。そのあたりに、セイタカアワダチソウが生え、花をつけた。去年も咲いたかどうか、ちょっと記憶にない。

よくよく見たら、少し下流、洪水でえぐられ、復旧工事が行われた路肩にもセイタカアワダチソウが咲いていた。いったん裸地化したところは、セイタカアワダチソウの絶好のゆりかごなのだろう。

それからの連想――。耕作が行われなくなった双葉郡の田畑は、セイタカアワダチソウにとっては天国だ。「季節外れの菜の花畑のようだった」と新聞記事にあった。原発避難者は美しかったふるさとの風景の変貌に心を痛めているに違いない。

0 件のコメント: