秋キノコが終わりに近づいている。とはいえ、去年同様、今年も森には入っていない。森の奥であのキノコが、このキノコが生えているに違いない――時折、そう想像するだけだ。
マツタケとコウタケに縁のない人間には、秋キノコの王様はウラベニホテイシメジだろう=写真。「匂い松茸味しめじ」の言葉があるように、シメジの味と歯ざわりはなかなかのものだ。細かく裂いて炊き込みご飯にするのが一番、と書くだけでよだれが出る。
8月、9月と秋キノコには厳しい天気だった。酷暑と少雨(8月)、記録的な残暑(9月)でキノコは不作に違いない。そう思ったが、10月に入ってからは結構豊作らしい、という話も伝わる。
が、現場を踏まないから情報がほとんど入らない。すると、キノコが意識から遠ざかる。きのう(10月26日)、夏井川渓谷の無量庵へ行ったついでに、キノコの採取日が書き込んである『フィールド日記』を持ち帰った。
正確には、水野仲彦著『山菜・きのこ・木の実フィールド日記』(山と渓谷社、1992年刊)だ。図鑑(写真)になっており、写真のわきのメモ欄に採取日と場所が書き込んである。
9~10月のメモからそれぞれ一例だけ紹介すると、ハエトリシメジ(9/20)、ウラベニホテイシメジ(10/10)、アカモミタケ(10/11)、ナラタケ(10/23)、ヒラタケ、ハナビラニカワタケ、クリタケ(10/24)……と、いろんなキノコを採取している。場所は夏井川渓谷、石森山(平)が主だ。
いつもの年だと、今ごろはシロに出向いてクリタケを採取し、汁の実にしたり、おろしあえにしたりして食べているはずだが、その楽しみが奪われた。
キノコの「旬」は「瞬」でもある。人知れず森の中に現れ、消えていく。だからこそ足繁く森へ通っていたのだが、それにブレーキがかかった。図鑑をめくってキノコを追憶するだけになった。東電は「自然享受権」をどうしてくれるのだ、という思いが膨らむ。
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