いわき市遠野町に金澤翔子美術館がある。金澤さんはダウン症の書家だ。建物に入るとすぐ正面に「希望光」の大作が飾ってあった=写真。
リーフレットによれば、津波被災地を訪ねた彼女が瓦礫の間に小さな赤い花を見つけ、「希望の光だ」とつぶやいた。被災者に寄り添う思いを「共に生きる」に表し、希望があることを伝えたくて「希望光」を書いた。そもそも美術館がいわき市に開設されたのも、東日本の復興を願ってのことだという。
同美術館は2011年12月1日、「きもの乃館 丸三」の協力を得て、その建物のなかにオープンした。知人がスタッフとしてかかわっている。すぐにでも訪ねたかったが、ずるずると日が過ぎて、きのう(10月14日)、ようやくカミサンと訪ねた。作品を見るのが主。それは当然だが、同時に知人の陣中見舞いを兼ねる。
館内に入った瞬間に目が合った。「あっ!」となって、まずは観覧料1人800円を払う。知人に案内されて金澤さんの書を見て回った。
「空」の字がいくつか展示されているコーナーで、不覚にもこみ上げてきそうになった。「空」の字を見た子どもたちがさまざまな反応を示すのだという。「空」が笑っている・泣いている・パンダに似ている・疲れている……。金澤翔子さんのストレートな思いが字に反映され、子どもたちがまたそれを見てストレートに反応する。
NHKの大河ドラマ「平清盛」の題字は彼女が書いた。テレビでは縦3文字だが、美術館に展示されているのは横3文字だ。さすがに縦と横とでは雰囲気が異なる。が、「平清盛」も含めて彼女の作品には、一般のプロにはない豊かな造形性がある。
プロでもアマでもない、なにか別の――そう「天与の役目」(母親の泰子さん)を与えられた書体。私たちが使う「心」だとか「夢」だとかは、すっかり手あかにまみれてしまった。それをまっすぐ見つめて書くから、こちらにぐさりとくるのだ。そこが違う。久しぶりにゆったり、ふんわりした時間をもてた。
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