小学高学年から中学にかけて記念切手収集に夢中になった。カタログで「未使用」「使用済み」の値段をみては“資産”を計算する。垂涎の的は切手趣味週間の記念切手だった。「ビードロを吹く娘」や「見返り美人」は、持っていれば自慢の種。その切手が最近、惜しげもなく使われたのを知って驚いた=写真。
シャプラニールは海外協力の一環として、地球環境と連動した活動「ステナイ生活」を展開している。本あり、はがきあり、外貨紙幣あり、切手あり……。使用済み切手は1キロが約600円になる。ネパールでは、3人がハザードマップ(防災地図)のつくり方を学ぶ2日間の研修を受けられる額だという。
自宅に届く手紙の切手を台紙ごと切り取り、たまったらわが家に届けてくれる知人がいる。そのなかに切手7枚を張った台紙があった。
80円のヤマセミ3枚のほかは、1955年発行の「ビードロを吹く娘」10円、再発行「見返り美人」80円、竹久夢二の「黒船屋」50円、1958年発行の国際胸部医学会議・同気管科学会議記念切手10円、計390円分だ。
57年前に発行された切手がなぜ今ごろ? こんなことを想像してみる。夫がかつて切手マニアだった、あるいは父親が。遺品を整理していたら、未使用切手がいっぱい出てきた。妻あるいは子どもにとっては、「ビードロ」だろうが「見返り」だろうが、家に“死蔵”されていた、単なる切手にすぎない――。
夫婦でも、親子でも価値観は異なる、というのが世の習いだ。かつての切手小僧はただの10円切手として「ビードロ」が使われたことにため息をつく。「ビードロ」は未使用なら評価2500円、使用済みでも2000円くらいとか。しばらく手元に仮置きして眺め暮らすことにした。
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