2017年11月1日水曜日

サンマの刺し身

 いつもの魚屋さんへ行く。顔を出すなり「カツオはありません」。「何があるの?」「サンマにタコ、マグロですね」。刺し身の話だ。カツオの代わりにサンマの刺し身を頼む、タコも少々=写真。
 カツオのシーズンが終わったわけではあるまい。台風や悪天候で出漁できないときがある。水揚げがないだけで、年内はあと少し刺し身を口にすることができるはずだ。

 サンマの刺し身を食べるまでにしばらく時間がかかった。海水温が高いので、まだ北海道のはるか沖にとどまっている。消費者の口に入るまで時間がかかるので、刺し身にはできない――そんな話を聞いたのは9月初め。

 同じころ、いわきでサンマの刺し身による食中毒事故が起きた。行きつけの魚屋さんが「まだ刺し身にできない」といったのは、寄生虫のアニサキスによる食中毒が懸念されるからだった。

 アニサキスは、サンマの鮮度が落ちれば内臓から筋肉の方に移動する。刺し身にして食べると、今度はサンマの筋肉に潜り込んでいたアニサキスが人間の胃壁・腸壁に入り込んで吐き気・嘔吐などの食中毒をおこす、ということらしい。

 サンマは3年続きの不漁だという。地球温暖化、公海への他国の漁船の進出もある。後輩(現役記者)がフェイスブックにアクアマリン館長の話をアップしていた。産卵場所の激減が根本的な原因、サンマは漂流する海藻などに産卵する、暖流と寒流のぶつかるところに海藻が集まる、その漂流藻が少なくなっている――。なるほど、これも押さえておかないといけない見解だ。

 アクアマリンは世界で初めて、サンマの人工繁殖に成功した経験を持つ。その知見を踏まえたコメントには重みがある。

 サンマの刺し身を食べたあとに、少し生臭さが残るときがある。刺し身にできるほど鮮度がよくても、時間がたてば味が落ちるということだろう。つくりたてのサンマの刺し身にはそれがない。ほのかな甘みさえある。日曜日(10月29日)の刺し身がそうだった。
 
 行きつけの魚屋さんが、サンマを刺し身にするのに慎重なのは、先代の教えが大きいこともあるのではないか。「サンマは、生だと中毒するから」。よく先代がいっていた。そういえば、焼きサンマをまだ食べていない。

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