日没が早くなった。夕方、近所から帰ってきたカミサンがいう。「夕焼けがきれいだよ」。そのたびに2階から西の空を眺める。たまたま外出からの帰りが日没と重なるときがある。夏井川の堤防であれば、思わず車を止めて夕日に見入る=写真。
若いときと違って、今は夕日に出合うとホッとする。きょうもなんとか無事に終わったか――。しかし、それから学校へ行く人たちがいる。
11月初めのNHKクローズアップ現代+「ひらがなも書けない若者たち~見過ごされてきた“学びの貧困”」を見た。
日本人なのに平仮名の書けない若者が増えている。「30%オフ」の意味がわからない。なぜ? いじめだけでなく、貧困、DV(ドメスティックバイオレンス)、病気の親の看護などで学校へ行か(け)なくなった人々がいるのだという。小・中学校の卒業証書はもらっても、実質的には教育を受けていないのと同じだ。
私ら夫婦が少しかかわっている国際NGOにシャプラニール=市民による海外協力の会がある。バングラデシュやネパールなどの南アジアで「取り残された人々」の支援活動を展開している。東日本大震災では初めて国内緊急支援を手がけ、以後5年間、いわき市平で交流スペース「ぶらっと」を開設・運営した。
シャプラがバングラで最初に手がけたのは、「取り残された人々」への青空識字学級と、ジュート(黄麻=こうま)を使った手工芸品づくりだった。文字が読めないことで人々はさまざまな不利益を被る。手に職を持ち、読み書きができるようになることで暮らしが向上し、希望が生まれ、可能性が広がる。
クロ現+を見ながら、シャプラの識字学級活動を思い浮かべた。と同時に、文部科学省の前事務次官前川喜平さんが今年(2017年)1月、次官を辞める1週間前に福島市で講演した内容も。前川さんは8月にも福島市で講演している。
友人が前に1月の講演録のコピーを持ってきた。講演は福島に公立夜間中学をつくる会が主催した。教育行政に取り組んできた前川さんの真摯さが伝わってくる内容だった。夜間中学の重要性について語っていた。
去年12月、「教育機会確保法」が成立した。義務教育から「取り残された人々」がいる。そのなかに、クロ現+が取り上げたような若者たちも入る。これまでは、中学校の卒業証書をもらった人は夜間中学に入れなかった。それが、この法律によって夜間中学で学べるようになった。少なくとも各県に1校は夜間中学を設置するように、という流れができた。
「個人の尊厳とか幸福を追求する権利とか、自分の人権を本当に意味あらしめる、発揮することができるためには、学習することが必要。学習することができなければ、自らの人権を守ることができない。私はすべての人権の不可欠の基礎として、教育を受ける権利・学ぶ権利があると思っています」
それこそが「エンパワーメント」=人々に夢や希望を与え、勇気づけ、人が本来持っている素晴らしい、生きる力を湧きださせること(ウィキペディア)――の原点だろう。
前川さんはこうもいっている。「教育を受ける権利には年齢制限はない」「教育を受ける権利を保障する義務にも年齢制限はない」「義務教育未修了者のために昼間授業をする義務教育学校があっても良い」。おおいに蒙(もう)がひらかれる講演録だった。
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