2008年4月12日土曜日

いわきのつるし飾り


4月10日、久しぶりにギャラリー「木もれび」(いわき市好間町榊小屋)を訪ねる。カミサンの知り合いの「ぴょんぴょん堂」さん(平)がお弟子さんと「押し絵」の作品展を開いている(14日まで)。で、運転手として「お供」をした。

会場に入ったとたん、あでやかな色彩に囲まれて息を飲んだ。古裂(こぎれ)のちりめんを現代風に生かした作品が、壁に、テーブルに、畳にズラリと並んでいる。羽子板、衝立(ついたて)、額絵、小物…。最近、人気を集めている「つるし雛」もある。

押し絵はちりめん細工の一種。絹織物ならではのやわらかな質感、豊かな色と紋様を利用して、作品をつくる。案内状には「伝統の形の中に新しさを感じ、ゆったりと流れてゆく時に想いを重ねてひとつひとつの夢を作品に表現」したとある。古裂が多様な表現となって現代によみがえった。

「ぴょんぴょん堂」さんの創作の原点という、生家の「つるし飾り」が展示されていた=写真。芽吹いて間もないヤナギの枝に、動物や兵士や、江戸時代の若者や娘や、やっこなどの押し絵がさがっている。平の商家では昔、仕事を終えた夜、人が集まって雛祭りに飾る押し絵を作ったという。この「つるし飾り」を「ちんころ」と言う人もいるが、「そうは言わなかった」と「ぴょんぴょん堂」さん。

旧暦の3月3日は、今年は4月8日だった。ちょうどその時期に合わせて作品展が開かれた(のだろう)。ヤナギもやわらかにあおめいている。季節とともに行事を楽しんだ昔の人たちの心の豊かさがしのばれる。とりわけ、新川だか夏井川だか、川の岸辺からヤナギの枝を取って来てそれに押し絵を飾る、そのゆかしさが。

いわき地方の「つるし飾り」については、民俗学専攻の学習院女子大非常勤講師山崎祐子さんが編集した『雛の吊るし飾り』(三弥井書店・平成18年刊)が詳しい。

山崎さんは、祖母が所有していた「つるし飾り」97点(「お志ゑ雛様 おつるし物」と書かれた箱に入っていた)について、概略を記し、1点1点の目録を作成した。

それで、『いわき市史』には触れられていない「お志ゑ」(押し絵)の「つるし飾り」の一端が分かった。むろん、平の商家では「(お)つるし物」と言っても「ちんころ」とは言わなかったことも。

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