2008年4月23日水曜日

赤黒く恐ろしい夕焼け


ブッドレア会の4月講師例会が先夜、いわき市常磐の古滝屋で開かれた。講師は評論家でいわき市立草野心平記念文学館長の粟津則雄さん。粟津さんは「日本人の心とことば」と題して、心とことばの奥深いところ(つまりは詩、と私は解釈したが)で結びついている個人的な体験を主に語った。

最初は小学校へ上がる前に見た「赤黒く恐ろしい夕焼け」の記憶。その夕焼けが、心とことばの奥深いところと結びついた一番早い出合いだったという。それから少年時までの記憶として、粟津さんは海岸の松籟と波の音(これに「無限」を感じたという)、町全体が「きれいな興奮」(柳田国男)に包まれる秋祭り、夏の花火大会を挙げた。

中学生でアルチュール・ランボーを知り、旧制高校時代に枝垂れ桜の怖さ、すごさを知って、「梅好き」から「桜好き」になった。詩人(たとえばランボー)に助けられた――とも語った。戦争末期の暗い時代、粟津さんはランボーに支えられて「時代にはむかう牙」を磨いた。

そして、宮沢賢治の「永訣の朝」を読んだときの衝撃。草野心平、小林秀雄との出会い。「永訣の朝」は、粟津さんにとっては「事件」だった。草野心平、小林秀雄は「決定的な存在」となった。

2007年10月、粟津さんが東京新聞夕刊に連載した「ことばの泉」が集英社新書として出版された=写真(平・石森山「せせらぎの道」で)。それを記念しての講師例会である。

粟津さんが個人的な体験を通じて語った「日本人の心とことば」は、日本の自然の営み、人間の営みと深く結びついたものだった。

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