朝は起きるとすぐ糠床をかき回す。次に、パックに入れて冷蔵庫で保管していた糠漬けを取り出し、包丁を入れて器に盛る=写真。
冬(師走~4月)は白菜漬け、それ以外は糠漬けと決めている。どちらも私がつくる。
去年(2025年)の夏、虫がわいて糠床をダメにした。それで、5月の大型連休明けに新しい糠床をつくった。
糠はカミサンの実家から調達する。実家は元米屋だが、精米は続けている。糠床をつくって半月後、また糠を調達した。
甕(かめ)を糠床に利用している。甕の大きさからして、最初の糠だけでは厚みが足りない。カブやキュウリ、ニンジンを一緒に漬けると入り切れなくなる。それで、量を倍増した。
毎年そうだが、最初はカブを漬ける。小さいので漬かりが早い。4つに割って一昼夜漬けておくとしんなりする。まあまあの味だ。朝の「糠仕事」の復活である。
キュウリはそのあとに漬ける。いわきの歴史や民俗、生業などに詳しかった故佐藤孝徳さん(江名)の言葉がブレーキを掛ける。
「キュウリは、八坂神社の祭りが終わるまで食べない」。つまり、7月。露地栽培では確かに、そのころからキュウリがなって旬を迎える。
ハウス栽培が主流の今は、冬でもキュウリを売っている。で、糠漬けを再開するときには一種の戒めとして、孝徳さんの言葉を思い出す。
といっても、カブの糠漬けを食べ始めると、やはりキュウリの糠漬けが恋しくなる。カブを漬けたら、キュウリも解禁――カブを言い訳にして、早い段階からキュウリを漬ける。
キュウリはなんといっても鮮度が大事だ。内部に水分がたっぷり含まれているうちに漬けると、切り口も色鮮やかでうまい。水分が飛んでしなびたようなキュウリは、漬けても中身が白くて味が薄い。
大根は、キュウリとは逆だ。できるだけ水分を飛ばす。冬のたくわんは干した大根を漬け込む。それと同じで、適当な長さに切って4つに割ったのを、台所の窓辺に2日くらい置いて糠床に入れる。すると、しんなりして食べやすくなる。
問題は甕を置いておく場所だ。台所の一角が定位置だが、年々、気温が高めになっている。
今年は減塩気味なのと、かきまわす回数が少なかったせいか、糠床をつくって2週間もたたないのに、かすかなシンナー臭がする。
これまでにも何度か経験しているので、食塩と唐辛子を加え、かきまぜる回数を増やすことにした。昆布も後日、調達して入れた。
夏場は糠床を北側の階段の下に移す。時には保冷剤をのせる。そうして糠床の熱を抑える。
糠仕事は日々、野菜と乳酸菌に思いを寄せ、包丁の扱い方を学ぶ場でもある。男はつい、キュウリでも大根でも厚めに切ってしまう。とにかく薄く切る。これも修業のひとつと言い聞かせる。
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