2026年7月24日金曜日

これからはふるさとで

                                 
 家の向かいに故義伯父の家がある。そこに画家阿部幸洋の小品だけでなく、個展の案内はがきをまとめた額がある=写真。それはそれで「作品」になっている。カミサンが額装した。

 その画家が自転車でわが家へやって来た。自宅(実家)はいわき市平の夏井川河口右岸域にある。歩けば40分というところだろうか。

 結婚と同時にスペインへ渡って半世紀近く。定期的に帰国してはいわき、東京、その他の都市で個展を開いてきた。

 今回もそうだと思っていたら、違った。スペインを引き揚げてきたという。これからはふるさとで絵描きとしての人生の仕上げをするわけだ。

 スペインはラ・マンチャ地方のトメジョソに住んでいた。妻のすみえちゃんは2009年9月末、向こうで急逝した。

生前、臓器提供の意思を明確にしていたため、心臓と肝臓がそれぞれスペインの市民に提供された。その意味では、彼女の魂はずっとスペインの大地で生きている。

すみえちゃんは妻であると同時に、阿部のマネジャー・通訳・運転手でもあった。毎年、個展を開くために帰国すると、夫婦でわが家へやって来た。

キャンバスが相手の夫に代わって現地の人たちと交流した。それで、すみえちゃんを母のように慕ってきた子どももいる。ラサロという。

すみえちゃんの死後、阿部が青年のラサロを伴ってわが家へやって来た。ラサロの弟も後年、パートナーとともにわが家を訪れた。今年(2026年)も来る。先日、連絡が入った。

私は50年以上も前、阿部と草野美術ホールで出会った。23歳だった。いわき民報社に入って2年目の駆け出し記者で、阿部は20歳ながら同ホールの広い壁面を使って個展を開いた。すぐ意気投合した。

 スペイン生活46年。今度は自分の絵かき人生の原点でもある実家で、ふるさとの風景の中でキャンバスに向かうことになる。

スペイン生活の集大成ともいうべき「帰国展」を考えているという。問題は、いわきのギャラリーではスペースが限られることだ。

トメジョソにアントニオ・ロペス・トーレス美術館がある。同美術館で2014年秋、阿部の個展が開かれた。

いわき市立美術館の佐々木吉晴館長(当時)がプライベートで個展を見に行った。彼によると、アントニオ・ロペス・ガルシア(1936~)というスペインの現代美術を代表する画家・彫刻家がいる。トーレスはその叔父さんだ。

スペイン現代美術の世界で阿部が画家として評価されたからこその、現地での個展だった。

それに匹敵するくらいの規模を考えているのではないだろうか。規模的には文化センターがいいのだが、借りるにはいろいろ制約がある。となれば、複数の会場で同時開催をする。そんなことを考えているという。

いずれにしても人生の区切りとなる回顧展には違いない。若いときから彼の作品を見続けてきた身としては、ふるさとに戻ってからの作風の変化もまた楽しみではある。

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