2015年4月29日水曜日

川前のカツラ

 日曜日(4月26日)は、夏井川渓谷の隠居で過ごした。午後、思いたって「川前のカツラ」を見に行った。4月下旬とはいえ、初夏のような暑さだ。
 隠居から車で駆け上がること、およそ10分。JR磐越東線川前駅近く、一筋の集落を貫く川の岸辺にカツラの巨樹が立っている。十数本が株立ちしているが、元は1本の木だ。

 春に、葉に先駆けて花が咲く。花はすでに散り、淡い緑の葉を全身にまとっていた=写真。インターネットでチェックしたら、花はフサザクラのように糸状で、房になる。色はピンク。いつも4月前半はアカヤシオ(イワツツジ)に心を奪われ、同じ時期に咲くカツラの花を忘れている。今年もそうだった。

 葉を落とした冬のカツラは、根元がごつごつとしている。初めて冬のカツラを見たとき、巨樹だけが放つ生命力に圧倒された。緑をまとった今は、根元の岸辺が緑のじゅうたんに覆われ、ニリンソウの白い花が群れ咲いていた。

 いわき市の保存樹木に田人町旅人字和再松木平のカツラがある。高さは11.7メートル、株立ちした幹回りは3.5メートル。「川前のカツラ」は「田人のカツラ」より大きいのではないか。保存樹木にも、市の天然記念物にもなっていない、知る人ぞ知る巨樹――見るだけで元気がわいてくる。

 隠居へ戻ると、中学校の同級生(大工)がカミサンと話していた。私と同じ神谷に住む。わが家からは歩いて5分、途中に田んぼがあったが、この4年間で宅地に変わった。

 同級生も初夏のような陽気に誘われ、奥さんと娘さんを伴って山中のレストランへ食事に出かけ、その足で渓谷へやって来た。渓谷はすでに淡い緑、濃い緑、深緑、黄緑と、さまざまな色調の緑に染まっている。花もアカヤシオからトウゴクミツバツツジ、ヤマツツジに移った。

 前に、同級生に頼んで隠居の台所を拡張し、濡れ縁を広げた。その濡れ縁に座り、対岸の緑を眺めながら雑談した。パソコン画面と違って、天然の緑は見続けても疲れない。あきない。いや、逆に眼精の疲労がとれていく。「目には青葉」、なかでも阿武隈の雑木山が一番美しく輝く時節を迎えた。

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