2015年4月11日土曜日

神谷の桜

 近所の家の庭にソメイヨシノの大木がある。この時期、わが家から表に出たり、2階の物干し場に立ったりしたとき、綿菓子のような花のかたまりがドーンと目に入る。そこにあるのはわかっているのに、春の開花期以外は忘れている。葉より早く花が開く。その混じり気のない清潔感に人は圧倒されるのかもしれない。
 ふだんは雑事に追われて花見に行くような余裕はない。前にも書いたが、花に出合えば、そこが即、花見の場所。それでよし――としている花が、わが生活圏(旧神谷村)にはある。

 近所でももう1本、ちょっと離れた知人の家の前にソメイヨシノの大木がある。今年もきれいに咲いた。

 街への往復に、夏井川の堤防と、たまに山側の田んぼ(神谷耕土)の道を利用する。山側の上神谷・住善寺の境内に市保存樹木のシダレザクラ(エドヒガン)がある。前は斜面の杉林の陰になっていて、道路からは見えなかった。それが、今は杉の木が伐採されたためによく見える。

 堤防沿いでは、東日本国際大のある鎌田山のふもと、住民が畑に利用している夏井川の河川敷の一角にヤマザクラがある=写真。花と赤っぽい葉が同時に開く。河川敷にあるヤマザクラは、ざっと見た限りではそこだけ。実生ではなく、だれかが植えたのだろうか。地味だがふわっとしたたたずまいのヤマザクラが好きだ。

 その桜の近くにソメイヨシノの並木がある。てんぐ巣病にやられている。もっと下流、河川敷のサイクリングロードに、桜の幼樹が植えられた。何度か大水に見舞われては水没した。そのつど、草本類のごみがかたまりになって引っかかる。ほとんどの木が斜めに傾き、やがて枯れた。ソメイヨシノは、見た目はきれいだが、病気にはからきし弱い。

 けさ(4月11日)は、まだ雨が降っている。が、昼前には夏井川渓谷の隠居(無量庵)へ出かける。谷の斜面をピンクのアカヤシオの花が彩っている。東京の客人などを迎えて、室内でオードブルを食べながら花見をする。
 
 人間が生み出したソメイヨシノと違って、谷の天然林は何かが独占するということはない。多様で多彩な個性、「緑の民主主義」が生きている。

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