2015年4月14日火曜日

天然の山水画

 きのう(4月13日)の続き。夏井川渓谷の隠居(無量庵)の真ん前、対岸の森を、廊下のガラス戸をちょっと開けて「掛け軸」風に撮ってみた=写真。谷底に近い方は木の芽が吹き、少し上の方はピンクのアカヤシオ(イワツツジ)が点々と咲いている。白っぽく見えるのは、まだ裸のままの木々。
 写真の枠から右(写っていない)に、木々の枝に隠れた滝がある。午前中は太陽に照らされて、濡れた岩盤が銀色に輝いている。実際の流れは糸のように細い。風景が動いている、生きている――無量庵の庭からそれがわかる。

 雨の土曜日(4月11日)、天然の山水画のなかを、カケスとカワウ、カルガモ(ペア)が横切って行った。鳥たちも渓谷の住民だ。

 その翌日、晴れの日曜日。溪谷は大混雑した。展望台と水力発電所の空き地(東北電力の社宅跡)にはさまれたわが隠居の庭も、人が自由に行き来する“公共空間”になった。あいさつをされれば「どうぞ。どうぞ」になるが、黙って入って来た人には黙って見返すしかない。
 
 行楽客は一過性だ。平気で庭に入り込む人は、平気で庭のタラボをもぎ取っていく。家にだれもいないと知れば、母屋と風呂場をつなぐ廊下の前の“坪庭”をトイレ代わりにする。それが嫌で、土・日と隠居で過ごした。
 
 いわき市が電力の空き地の隅っこに、行楽客のためのエコトイレを設けた。行楽客のいない冬場は使用中止になるが、4月はアカヤシオの花が咲く。それに合わせて使えるようにしていたはずだが、今年はまだ使えない。
 
 展望台をつくったSさんに、行楽客が「トイレが使えない」と文句を言ったそうだが、それは筋違いだ。エコトイレを管理する部署が溪谷の自然を熟知していれば、とっくに観光トイレは機能しているはずだ。天然の山水画の裏にはこういった悩ましい問題もある。

0 件のコメント: