2015年4月2日木曜日

クレソンの若葉

 寒風にさらされて赤茶けた葉の間から、新しい緑の葉がのぞくようになった=写真。夏井川渓谷の隠居の近くにある小流れのクレソンだ。3月後半になると地温が上がってきたのか、小流れのそばの湿地でキクザキイチゲが咲きだした。渓谷に春がきたことを、まっさきにこの湿地で知る。
 隠居の庭の周辺は自然の恵みにあふれている。特にキノコは1年中発生する。冬はエノキタケ、春はアミガサタケ、梅雨どきはマメダンゴ(ツチグリ幼菌)、夏はチチタケ、秋は種々の食菌たち。そして、春のコゴミ(クサソテツ)やフキノトウ、ワラビ、秋のアケビ。山里ではそんなにカネがなくても、知恵とウデで暮らしを豊かに彩ることができる。

 3・11前のひとコマ――。年末に隠居へ出かけ、庭のフキノトウを摘む。1カ所だけフキが群生している。早いと師走のうちにフキノトウが頭を出す。それを摘んでみじんにし、元日の雑煮に散らしたり、「七草粥」や味噌汁に加えたりする。
 
 小流れは1年中涸れることがない。前にクレソンを放したら繁茂した。が、水かさがないから丈は低い。冬になるとかじかんで赤茶ける。春になるとぐんぐん青い葉を茂らせ、小流れを覆うほどになる。しばらくは採り放題だ。それが、ある日突然、できなくなった。
 
 3・11から4年――。セシウム134が半減し、同137も減衰して、放射線量は確実に少なくなっている。で、<いわき見える化プロジェクト「見せます!いわき情報局」>をのぞいて、データを確かめる。
 
 たとえば、ネギ。根が深いために線量の影響を受けにくいのか、いわき市内全域で「キロ当たり10ベクレル未満」、つまり「不検出」だ。この「状況証拠」を踏まえて、隠居で「三春ネギ」の栽培を再開した。
 
 いわきのフキノトウも「10ベクレル未満」になった。クレソンは1点だけ、16ベクレルがあったが、これだって「不検出」とそんなに隔たってはいない。ほかは、やはり「10ベクレル未満」だ。
 
 実際に口にする量は、フキノトウなら1個当たり10グラム前後を1つか2つ。クレソンだって100グラム程度だろう。とすると、「キロ当たり10ベクレル未満」は、さらにその100分の1、あるいは10分の1ということになる。
 
 市内のデータがそろってきたので、先日はフキノトウを摘んでみじんにし、みそ汁に放した。クレソンは大型連休まで待って、生をマヨネーズで食べようと思っている。ただし、野生キノコはまだ摂取ができない。精神衛生的には、これが一番こたえる。

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