夏井川渓谷といえば、春のアカヤシオ(イワツツジ)と秋の紅葉だ。いわきの平地でソメイヨシノが開花するころ、渓谷でもアカヤシオの花が咲きだす。きのう(3月31日)の陽気で開化したものがあるかもしれない。
渓谷のどまんなか、牛小川の集落で支流の中川が本流に合流する。中川は、いわき市川前町の神楽山(かぐらやま=808メートル)から発する。滝の連続する短い流路だが、合流地点から少し上流に「天狗の重ね石」がある。
いかにも天狗か巨人がひょいひょい石を重ねてつくったような奇観の断崖だ。谷を刻む流れはここで鋭くヘアピン状に屈曲する。断崖は、真横から見ればあいきょうたっぷりのゴリラの横顔、真正面から見ると船のへさきのように薄い。岩盤剥離(はくり)も進行している。
1年にいっぺんはゴリラに会いに行く。7年前の写真や4年前の写真と比べると、やはり少しずつ変化している。
大震災ではまぶたの下の岩がはがれて、そこだけ赤茶けた色を外気にさらしていた。4年たっても“赤ちゃん肌”のままだ。そばに生えていた松とツツジらしい幼樹は姿を消した。人間のすり傷はやがてかさぶたができて、元通りになる。が、岩のゴリラの傷はそのままだ。(夜になると痛くて涙を流しているのかな)
おおむね花崗岩でできている夏井川渓谷は、日々、落石が発生している。中川渓谷も同様だ。3・11では渓谷の至る所で落石が起きた。それもまた、自然史のひとこまではある。
きょうから新年度、そして「ふくしまデスティネーションキャンペーン〉初日だ。「天狗の重ね石」は、わが隠居のある夏井川渓谷の牛小川では、年間を通してPRしたい絶景のひとつだ。
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