2015年5月3日日曜日

後方から・下

 きのう(5月2日)は朝、テレビ小説「まれ」を見たあと、テレビをつけっぱなしにしていたら、カミサンの東京の親友から電話がかかってきた。台所にいたカミサンが受話器を取ると、急に大声を出した。「ほんとだ、出てる!」。つられて見ると、知っている人がテレビに映っていた。国際NGO「シャプラニール=市民による海外協力の会」の小松豊明事務局長だ=写真。
「週刊ニュース深読み」で<地震から1週間 ネパールは今>を小特集として取り上げた。事務局長氏は、緊急救援活動に入ったシャプラのこの1週間の取り組み、今後の取り組みについて話した。シャプラはこの日、午後1時から東京で最初の緊急救援報告会を開いた。フェイスブックでほぼリアルタイムで中身を知った。

 バングラデシュとネパールにシャプラの駐在員がいる。バングラでは児童教育支援など、ネパールでは洪水リスク削減プロジェクトなどのほか、インドでも紅茶園スラム居住者支援事業を、現地のパートナーNGOと協働して展開している。3・11後は初めて国内支援に入り、いわきで交流スペース「ぶらっと」を運営している。

 現在はシャプラの評議員をしている大橋正明さんが、たまたまバングラでプロジェクト評価の仕事をしているときに大地震が発生した。大橋さんはすぐ仕事を切り上げ、ネパール緊急救援計画を立てた。今はインド経由でネパールのチトワン郡にいる。バングラの駐在員のほか、東京からもシャプラの職員が急派された。前事務局長でシャプラ評議員の筒井哲朗さんもネパールに飛んだ。

 大橋さんらがバングラからインドへ入り、さらにネパールでどう動き、何をしているかが、それぞれの、あるいはシャプラのフェイスブックで手に取るようにわかる。

 おおまかにいえば、現地のNGOや行政と連携し、ビニールシートや医薬品、食料品などを被災者に配布している。なにがすぐ必要かを判断して現地で購入したものだ。緊急支援の経験・ノウハウを積んでいるからこその“即決・即行”だろう。いわきでの緊急救援活動もノウハウの一部になっているのかもしれない。スピードの速さにただただ感心している。

 なにより現地にパートナーNGOがいること、つまりネットワークがあること、さらに土地鑑のあるシャプラスタッフがいることで、政府―マスメディアの「鳥の目」的情報とは別の、より被災者に密着した「虫の目」的情報、それに基づく分析・判断・行動が的確だという安心感がある。後方支援のかなめである東京の現事務局長氏も元ネパール駐在員だ。ネパールを熟知している。
 
 その意味では、今回はシャプラを通じて細かい情報をつかみ、あとでマスメディアで全体的な状況を知る、という流れになっている。
 
 3・11からおよそ2週間後、大橋、筒井さんともう1人がいわきのわが家へやって来た。そこから社協・市本庁・市勿来支所・錦須賀の津波現場と巡り、さらには岩間~小浜~小名浜~永崎と壊滅的な被害に遭った沿岸域を見て回った。シャプラはその後、原発事故の風評被害も重なったいわき支援に本腰を入れる。現事務局長氏はしばらくいわき駐在員を務めた。

 インターネット時代になって、シャプラのフットワークの軽さ、機動性、そして被災者と直結した個別・具体の援助を、わが家にいながらほぼ同時進行的にわかるようになった。だからこそというべきか、ほんとうの支援とは――を40年以上も変わらずに追求しているシャプラの現場主義、愚直さにあらためて敬服している。
 
 それが、私らいわきの人間ができる後方支援の大きな力になっている。個人的には、私より若いが60歳を超えたシャプラの「御大」大橋さんが現場で頑張っている、こちらもがんばらなければ――という気持ちになっている。

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