大型連休とはいっても、自由に動き回ったのは5月3日の日曜日(憲法記念日)だけ、ということは前にも書いた。要は、いつもの日曜日でしかなかったわけだが、この日におもしろい写真がいくつか撮れた。早朝の托鉢僧、川内村の木戸川を飛ぶカワウ……。なかでも一番の収穫は、いわき市川前町の“スーパー林道”(広域基幹林道上高部線)で出合ったヤマドリだ=写真。
隠居のある夏井川渓谷の牛小川(いわき市小川町)を起点に、支流の中川と神楽山(808メートル)のすそを、“スーパー林道”が通る。尾根沿いにアップダウンとカーブが続く。延長14キロ。終点は荻(同市川前町)だ。荻は放射能のホットスポットになった。
あの年、大型連休中の5月5日、隠居のガス点検に来た川前町の商店主が、怒りを込めて川前の汚染の実態を語った。荻の住民が自主的に放射性物質の線量計測を始めたら、ところによっては毎時2.88マイクロシーベルトという高い値を計測した。なのに、行政は動こうとしない――。
すぐ“スーパー林道”を駆け上がり、荻を訪ねた。翌6月には田村市の実家の震災見舞いを兼ねて、放射線量を測りながら“スーパー林道”を走った。さらに2年後の2013年5月2日、同じルートを、やはり放射線量を測りながら通った。
いつ車を走らせても対向車はない。今度もなかった。唯一の例外はあの年の6月。軽トラとすれ違った。日中、人を見たこともない荻の集落では、若い女性が道路を歩いていた。県道までもうすぐ、というところではタクシーとすれ違った。人の姿が目につくほど「非常事態」だったのだ。
“スーパー林道”の終点寄り、坂を下る途中で阿武隈高地の最高峰大滝根山が見える。それが今度は木の間越しにしか見えなかった。斜面の木々が生長している。
ヤマドリには、車の走らない林道も含めた環境が好ましいらしい。白昼堂々と、日の光があふれる場所に出て闊歩していた。人間には過敏に反応する鳥だが、車には鈍感だ。車を止めて、何枚か写真を撮ることができた。
キジは平地の河川敷や畑で日常的に見ている。ヤマドリは、あちこちの山で何度か「母衣(ほろ)打ち」を耳にした。姿を見るのは初めてだった。尾羽が長い。獅子頭に使われるのはこれか、などとよけいなことを連想しながら、ヤブに消えるまで見入った。
0 件のコメント:
コメントを投稿