2015年5月9日土曜日

田んぼ道をゆく托鉢僧

 5月最初の日曜日3日は、カレンダーを赤く染めた4連休の初日だった。隠居のある夏井川渓谷を経由して川内村へ向かうため、わが家から近くの小川江筋沿いの道を利用して小川町へ抜けた。
 早朝7時半すぎ。平中塩地内に入ると、網代(あじろ)笠をかぶり、墨染の法衣をまとったお坊さんが歩いていた=写真。山際に沿ってつくられた疏水(そすい)、つまり江筋沿いの山側に曹洞宗の寺がある。そこの住職だ。道の先の民家の庭におじいさんが立っていた。お布施を用意しているらしく、お坊さんが近づくと門扉を開けて道に出た。

 私がまだ現役のころ、定期的にこのお坊さんが職場の新聞社へ浄財を持参した。毎月最初の日曜日早朝、寺の近くを托鉢して回っている。檀家などからお布施が寄せられる。それらを福祉施設などに役立ててほしい――というのが趣旨だった。

 このお坊さんとは付き合いはないが、顔は知っている。いわき市文化財保護審議会の委員でもある。専門は地学か考古学か、あるいは別のなにか、私の認識不足でわからないが学究の徒にはちがいない。

 以前にも同じ日曜日早朝、托鉢姿で寺の近くの田んぼ道を歩いているお坊さんを見たことがある。二度、三度……。古い記憶を重ね合わせると、このお坊さんの托鉢歴は20年以上になるのではないか。10年で120回、20年で240回、25年だと300回。チリも積もればなんとやらで、福祉施設に贈られた浄財は相当の額になる。
 
 ただの通りすがりの者にすぎないとしても、多少は来歴を知っている。それでいうのだが、田んぼ道を行く托鉢姿のお坊さんを見るとさわやかな気持ちになる。ああ今月もがんばってるなぁ――なんでもいい、なにかひとつ、春も夏も、秋も冬も心に決めた社会貢献活動を続ける。「継続は力なり」の典型だ。

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