いわき市小川町の草野心平記念文学館へ行くと、真正面のアトリウムロビーに立って、分厚いガラス壁面越しに二ツ箭山と向かい合う。壁面に心平の「猛烈な天」がプリントされている。その天は、実際には灰色だったり青色だったりする。日曜日(5月10日)に訪ねたときには、青空に白い雲が広がっていた=写真。
その日は、月3回ある行政関係の回覧物を地区の役員さんに届ける日でもある。朝9時から小一時間で配り終え、夏井川渓谷の江田地区へ直行して隠居の地主さんに地代を払ったあと、とんぼ返りで文学館を訪ねた。
「草野心平の詩 視覚詩編」が6月14日まで開かれている。「冬眠」というタイトルの作品は、原稿用紙の真ん中に「●」があるだけ。「Q」でおたまじゃくしを、「ろる」を空間的に散りばめてカエルの抱接(交尾ではない)を表したものなど、意味を考える前に見て楽しむ作品が展示されている。
「読む」(コミュニケーション)より、「感じる」(バイブレーション)――文学より先に美術があった人間らしい“超詩”だ。
さて、ガラス壁面に記された心平の詩は「猛烈な天」。3連11行の第1連を記す。
血染めの天の。
はげしい放射にやられながら。
飛びあがるやうに自分はここまで歩いてきました。
帰るまへにもう一度この猛烈な天を見ておきます。
目の前に広がる二ツ箭山の南面は、大昔、断層を境にしてずり落ちた。「地球動乱」時代の「猛烈な天」の下、いわきでは3・11のちょうど1カ月後、湯ノ岳断層が動いた。東日本大震災以来、大地のバランスが崩れている。二ツ箭断層が動くかもしれないという思いと、動くなという思いが交錯する。
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