2018年5月14日月曜日

いわき昔野菜保存会

 土曜日(5月12日)に、いわき昔野菜保存会の総会・懇親会が開かれた。同会は、いわき市内に残る在来作物の調査・保存・普及を図り、次世代に継承していくことを目的にした市民団体だ。
 夏井川渓谷の隠居で在来作物の「三春ネギ」を栽培している。8年前、市が在来作物を調査することになって、担当者からインタビューを受けた。それが、「いわき昔野菜」事業とかかわる始まり。年度ごとに発行される報告書の巻頭言を、求められて書いた。

 市農業振興課が、いわきリエゾンオフィス企業組合に発掘・調査事業を委託した。リーマンショック後の緊急雇用事業を兼ねていた。事業を始めた翌年には“原発震災”がおきる。ますます事業の意義・必要性が増した。保存会もできた。

 しかし――。在来作物は、大量生産・流通、そのための同一規格、という経済性からはずれたところで、「自産自消」のサイクルのなかで細々と生き残ってきた。地域の食文化、あるいはローカルな循環型社会の構築を模索する流れができると、今度はそれを経済に結びつけようという安直な発想が生まれる。
 
 同保存会は調査終了を機に、自立した。会の中軸は生産者や、生産~加工~消費の流れを調査した元スタッフだ。フィールドワークの強みが生かされている。これに、理論的なアドバイザーとして江頭宏昌山形大教授が加わっている。
 
 懇親会では栽培技術や料理の話で盛り上がった。私は「いわきでもアカネギが栽培されている、種屋から買ってきた種をまいて育てたものか、昔から自家採種して栽培しているものか」を尋ねた。元調査スタッフは「アカネギ栽培は初耳だ」といい、江頭教授は「在来種のアカネギは貴重。しかし、種採りが面倒くさいのでやめる生産者がいる。今は種屋から種を買ってきて栽培している」と教えてくれた。
 
 二次会の店にたまたま、映画「洟をたらした神」の上映会で知り合った若い仲間がいた。「いわき昔野菜」のドキュメント映画を――と誘ったら、乗り気になったようだ。ぜひ実現したい。
 
 その店では女性シェフが「いわきでしか食べられない豚の生ハム」を出してくれた=写真。いわきの北部で飼育されている「あぶくまX豚」だとか。いわきだから口にできる食材は、昔野菜に限らない。豚も、魚も、キノコも――。しかし、そんな思いを深く抱くようになったのは、やはりあの“地獄”を経験したからだ。

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