2018年5月19日土曜日

ホトトギスの初音を聞く

 2週間前(5月6日)に夏井川渓谷でジュウイチの初音を聞いた。それに刺激されて拙ブログにこう書いた。
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 日本へ渡って来るカッコウの仲間は4種。鳴き声を聞く限りでは、ツツドリ・ジュウイチ・カッコウ・ホトトギスの順に到着する。カッコウは、わが生活圏ではもう幻の鳥になった。
 
 ホトトギスは山にも平地にも現れる。夜も鳴く。幼いとき、その鳴き声を聞きながら、祖母が寝物語に怖い話を語ってきかせた。

 昔、きょうだいがいて、食べもののことで口論になった。食べていないのに「食べたべ」と弟から邪推された兄が、身の潔白のために腹を裂いて死んだ。弟は自分の誤りを悔い、悲しみ、ホトトギスになって「ポットオッツァケタ」=ポッと(腹が)おっつぁけた=と鳴き続けているのだという。
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 その後、腹を裂いて死んだのは兄かどうか、気になって家にあるはずの昔話集を探したが、見つからない。
 
 先週の土曜日(5月12日)、平のマチで「一箱古本市」が開かれた。カミサンが行きたいというので、アッシー役のついでにのぞくと、若い仲間が経営する古本屋が出店していた=写真。日本昔話記録3・柳田国男編/岩崎敏夫採録『福島県磐城地方昔話集』(三省堂)があって、ホトトギスの「弟恋し」が載っていた。
 
 昭和48年発行だが、もとは昭和17年(「付記」には同18年とあるが間違いだろう)に刊行された。復刊本だ。500円なので買った。「弟恋し」は双葉郡富岡町の60代女性から採録した。
 
 ――あるところに兄弟がいた。兄は仕事に出かけ、弟は山へ行って芋を掘って暮らしていた。兄思いの弟は、芋のおいしいところを兄に食べさせ、自分は芋の端っこばかり食べていた。ところが、腹黒い兄は、弟が自分よりもっとうまいところを食べているのだろうと邪推して弟を殺し、腹を裂く。中から出てきたものは芋の皮や“しっぺた”(端っこ)ばかりだった。

 兄は悔い悲しんで、ホトトギスになった。春から夏になると、それで「弟恋し弟恋し」と鳴く――。
 
「補註」を読んで、兄弟が姉妹だったり、腹黒いのは弟だったりと、話はバリエーションに富むことを知る。食べ物も食べ方も地域によって異なる。ということは、私の記憶も間違いとはいえない。
 
 それだけではない。補註にこうあった。「鳴き方も、『おとと恋し。』の他に、(略)『ぽっとおっつぁげた。』、『ほんぞんかけたか。』とか、『おとのどつきたおとのどつきた。』と鳴く。(略)そして山芋の蔓(つる)の出るころ鳴くのである」。「ポットオッツァケタ」のケは濁音のゲだったか。
 
 台所に置いてあったトロロイモ(山芋と同類)が芽を出し、蔓状になったので、夏井川渓谷の隠居の庭に植えた。その話を、さきおととい(5月16日)書いた。きのう(5月18日)、夏井川の堤防でホトトギスの初音を聞いた。山芋の芽がのびるとホトトギスがやって来て鳴く、というのはほんとうだった。

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