2018年5月25日金曜日

戸渡のシラカバ

 5月初め、田村市常葉町の実家へ行くのに阿武隈高地を縦断する国道399号を利用した。
 いわき市小川町から双葉郡川内村へ抜けるあたりがなかなかやっかいだ。標高700メートルほどの十文字まで右に左に曲がりながら駆け上ったあとは、小盆地に向かってまた右に左に曲がりながら下る。すり鉢の底が小川の中戸渡(とわだ)地区。そこでも標高は500メートルある。旧戸渡分校の建物が残っている。

 旧分校の校庭には、皇太子殿下(現天皇陛下)から贈られたメタセコイアが3本。そして、分校と道路をはさんだ南側には、シラカバが少し間隔を置いて2本と4本=写真。なぜそこにシラカバが?

 平地の街や郊外と海抜の高い山里では、生息する動植物に異同がある。シラカバはいわきの平地にはない。奥山ではどうか。三和町の芝山(標高819メートル)の頂上近くにシラカバ林がある。天然林かどうか、私はわからない。

 故奈良俊彦著『阿武隈のきのこ』(阿武隈の森に親しむ会、2008年?)には、場所は明かされていないが北方系のベニテングタケの写真が載っている。

 シラカバなどカンバ類の樹木と共生するキノコだが、それらの樹木が自生していない阿武隈では見つけることが不可能だろう――と奈良さんは思っていた。ところが、「偶然にも憧れのベニテングタケが目の前に現われたものであるから、大感激をしてしまった」。周囲をよく見たら、シラカバが十数本植えられていたという。ならば、戸渡のそこにベニテングタケが発生しても不思議ではない。

 欧米では、毒キノコなのにキノコの代表みたいに愛されている。絵本やグッズによく登場する。一度はこの目で確かめたい幻のキノコだ。

 おととし(2016年)の8月、サハリン(樺太)を旅した。東海岸の道路沿いにはシラカバが生えていた。ベニテングタケが出そうだな――車で移動しながら思った。いつかは戸渡でベニテングタケの写真を撮りたいものだ。

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