2010年3月1日月曜日

チリ地震


チリのノーベル賞詩人パブロ・ネルーダ(1904~1973年)の詩に「チーレの海」がある。17歳のときに気に入ってノートに書き写した。チリはスペイン語読みでは「チーレ」。次は、その一部。

〈おお、チーレの海よ、おお/突き立つかがり火のように高い水よ、/圧力よ、雷鳴よ、サフィアの爪よ、/おお、塩と獅子の地震よ!/流れよ、始原よ、遊星の/海岸よ、おまえのまぶたは、/大地の正午を開き、/星々の青さに挑む。〉

チリで大地震が発生した。新聞によれば、震源は首都サンティアゴの南西約325キロメートルの沿岸地区=写真。チリは地震国だ。〈突き立つかがり火のように高い水〉とは、津波のことか。今度読み返して、そんな感じにも受け取れた。〈塩と獅子の地震〉が〈突き立つかがり火のように高い水〉をもたらす。それが太平洋を渡って日本の沿岸にも押し寄せた。

チリ地震といえば、50年前の昭和35(1960年)5月の津波被害が思い起こされる。

チリからおよそ1万7,000キロメートル隔てた日本に、地震から約22時間後に第一波が到達した。そのあと、さらに高い津波が押し寄せた。東北地方を中心に被害が続出し、いわき市でも11世帯57人が被災し、2人が死亡したという。いわきでの最大波高は3メートル以上に達した。

きのう(2月28日)は、NHKテレビが津波関連の特報を続けた。朝、用事があって新舞子海岸へ出かけた。雨がみぞれに変わり、海の波は白く砕けて荒れていた。

いわきでも避難勧告・指示が出された。午後には常磐線が運休し、海岸の道路も部分的に通行止めとなった。

この50年間に日本列島沿岸の防災設備や、情報伝達システムは一段と整備された。津波監視網も格段の進歩を遂げた。人的被害を避けるための避難勧告や指示、交通規制は、「過剰反応」に当たるくらいがちょうどいい。今回の「人的被害なし」がそれを物語る。50年前の教訓がひとまずは生かされた。

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