夏から秋、日曜日の夜はカツオの刺し身と決めている。染付の「マイ皿」を持って魚屋さんへ出かける。たまに「あら」をもらう。このごろはカツオのあらよりヒラメ、ヒラメとスズキがあればスズキのあらを選ぶ。あら汁にする=写真。さっぱりした、上品な味が好ましい。
3・11前はもちろん、魚屋さんが扱う魚は地場物だった。漁協が操業を自粛している。ときどき新聞に「緊急時モニタリング検査結果」が載る。最新のデータでは、エゾイソアイナメ(ドンコ)だけが100ベクレルを超えていた。9月にはいわき沖でも試験操業が始まる。ようやくそこまできた。
ところが、魚屋さんの心配は消えない。「米は全量検査ができるが、魚は……」。鮮度の問題がある。「枯れる」農産物とちがって水産物はすぐ「腐る」。安全と鮮度をどう両立させるか。
そのうえ、気になることがある。報道によると、福島第一原発で海側にある観測用井戸の水から高濃度の放射性物質が検出された。しかも、この3日間で数値が急上昇しているという。漁業者はもちろん、魚屋さんも、消費者も海への流出を懸念している。怒りのこぶしを振り上げなくてもすむように。そう祈るしかない。
折から、原発事故時に指揮を執った前所長の訃報がメディアを駆け巡った。その死を悼むのにやぶさかではないが、問題はやはり汚染地下水の行方だ。大地をけっぺずらずに立てていれば――「カツ刺し」に引かれていわきに根を生やした人間の思考は、詮無いことと知りながらいつもそこへ帰っていく。
1 件のコメント:
魚は捨てるところがない。あら汁は子供時分良く食べました。それだけでごはんのおかずでした。 煮魚は骨になればお湯を注いでしゃぶりつくすよう魚の滋養分までいただきました。
いまは魚屋でなくスーパーで切り身を買うせいか「あら」もでなくなりお目にかかりません。
原発の地下水、海に捨てるだの放射能が高いだの水に色もにおいのないけれど、浜通りの人間にはもうどうにかしてくれ!と苛立ちしかありません。
コメントを投稿