それは、赤い大きな楽器ケースを提げて走る「セロ弾きのゴーシュ」の後ろ姿から始まった。
FMいわきの主催、いわき芸術文化交流館アリオスの共催で、きのう(2月25日)、東京都交響楽団の「ボクとわたしとオーケストラ」がアリオスで開かれた。午前11時から小学生、午後1時からは中学生が大ホールの客席を埋めた。満席だとおよそ1800人。コンサートが始まるまではスズメの井戸端会議のようだった。
FMいわきの支援組織「まちづくり倶楽部」の1人として、午前の部に招待された。連絡がきたのはだいぶ前だが、招待状が届いたのはつい最近。資料や郵便物の整理がへたで、必要なときにどこに置いたのかわからなくなることがある。先日も、てっきり招待状が届いているはずと思い込んで探したが、ない(当たり前だ)。カミサンにガミガミ言われても反論ができなかった。
さて、当日。アリオスの西隣、市庁舎南側の2階建て駐車場に車を止めた。2階に白バイが止まっていた。隊員が品川ナンバーの車の男性と話している。「ご愁傷さま」と胸の中でつぶやいて通りすぎた直後、男性がケースを提げて走りだし、視界から消えた。“説教”ですんだのかな。リハーサルには間に合うのかな――。開演時間が迫っていた。
大ホール3階、右側のそでが指定の席だった。左側は冗談で「姉御」と私が呼ぶWさん。右側はやはり旧知の女性のYさん。ともにFMで番組を持っている。カミサンの女学校の先輩Tさんが、Yさんの席の隣に座った。いずれも人生の先輩だ。Yさんが来る前、「両手に……」といいかけて口をつぐむと、Tさんが「ドライフラワー」と応じた。
そのあとすぐ、すり鉢の底(ステージ)に楽団員が勢ぞろいした。チェロのグループを見ると、ゴーシュ氏がいた。放免されたのだからふだんの倍は力を入れて演奏してくれるにちがいない――勝手にそう期待した。
プログラムには書いてないが、コンサートは耳になじんでいる行進曲で始まった。そのあと、ロッシーニ「スイス軍の行進曲」、久石譲「風の伝説」など3曲、チャイコフスキー「花のワルツ」を演奏した。合間にオーケストラの楽器紹介を兼ねて「ドラゴンクエスト」を奏で、子どもたち全員が「ビリーブ」を歌った=写真。
「ドラゴンクエスト」は、子どもたちは先刻承知。「ビリーブ」も学校の授業で習う。われらジイバアとちがって、大半は歌詞カードなし。見渡しながら感心していたら、1人、いや数人、つまらなさそうに黙って立っているだけの子もいた。
アンコールはブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」。演奏が終わって、つまらなさそうだった男の子を見ると、力いっぱい拍手をしていた。これこそが音楽の持つ力だろう。
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