車を運転しているとき以外は、窓に張りつくようにして風景を眺める。電車。モノレール。飛行機。タクシー。さすがに地下鉄の場合は車内の様子をウオッチングするだけだ。
今度の台湾旅行では、常磐線のほか、羽田―台北間の空からの眺め、台北―高雄の新幹線、台中―日月潭のバスからの風景を目に焼きつけた。
行きの旅客機。風が強かったものの、晴れて眼下にくっきり風景が広がっていた。富士山は真っ白だった。雲が現れても、はるか下を行く。名古屋、大阪、四国、九州、……。どこでも川筋に集落があった。流域単位に生活圏、文化圏が形成されていることがよくわかった。
カメラをバッグに入れたままだったので、行きは見るだけ。帰りはカメラを手元に置いた。台湾は寒気団が居すわり、雨模様の日が続いた。離陸して雲海を抜けてから、眼下に広がる雲の写真を何枚か撮った。
雲の底は水平だということを、以前、モーターパラグライダーで動画を撮影している人のミニミニ講演で聞いたことがある。雲の上は、わりと凸凹している=写真。3カ月前に大腸の内視鏡検査をした。1年前と変わらなかった。ドクターの言葉。「相変わらずポリープが多いですね」。内視鏡がとらえた大腸の内壁の凸凹を連想した。
その凸凹が、やがて夕日を浴びて陰影を帯びるようになった。雲海の上に広がる青空もだんだん暗みを増した。空が「北斎ブルー」になると、主翼に赤い光が差した。それからほどなく闇が訪れた。
やがて羽田が近づく。眼下に海岸線と道路に沿って明かりがともっていた。「ミミズの目」ではわからない風景だ。内心は怖くて仕方がない「ツルの目」だ。着陸すると、ホッとした。旅行直前に起きた台北での飛行機事故が、頭のどこかにずっとひっかかっていた。
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