2015年2月16日月曜日

春の雪

 きのう(2月15日)、3週間ぶりに夏井川渓谷の隠居(無量庵)へ出かけた。いわきの溪谷は、家でいえば1階(平地)と2階(山地)をつなぐ階段の踊り場に当たる。平地では積もってもすぐ消える雪が、渓谷に入ると道端にかたまりとなって散見されるようになった。隠居の前では雪がでこぼこの帯状になっていた=写真。
 山地では雪が積もると、グレーダーが出て道路の雪を道端に寄せる。道端にはそれで雪の柵ができる。柵になった雪の名残だろう。溪谷の先、家でいえば2階にあたる上流の川前、あるいは田村郡の方ではまだ銀世界のところがあるにちがいない。

 この3週間で渓谷に雪が降ったと思われるのは2回。福島地方気象台によると、同じ溪谷の川前で1月30日に24.5ミリ、2月8日に10ミリの降水量があった。平地の平でもそれぞれ23ミリ、10ミリの降水量を記録した。記録のうえでは雨でも、山地では雪になったのではないか。

 というのも、1月30日の平ではこんな感じだったから――。夏井川をはさんで中心市街地とつながる旧神谷(かべや)村のうち、市街地に近い鎌田、塩地区では雪、それから東の中神谷地区では雨だった。いわきでは、南岸低気圧が発達しながら東進する春先に雪になりやすい。この日はたまたま平地で雪と雨の境がはっきりしていた。

 渓谷では、道端だけでなく右岸北向きの斜面も雪をかぶっていた。隠居の庭にもチャブ台くらいの大きさで雪が残っていた。葉を落としたシダレザクラが2本ある。密生した枝の影が融雪を遅らせたようだ。20年の渓谷通いからの類推だが、これらの雪は1月30日ではなく、2月8日に降ったものだろう。

 戦前、長野県の小中学校で教鞭をとった三澤勝衛(1885~1937年)は、「風土」を大地の表面と大気の底面が触れ合うところ、と規定した。人が拠って立つ生活圏でもある風土を知り尽くすことが自然を活用した産業を育成する基礎になる。三澤風土学が指し示すものは、風土はそこだけの、そこにしかないローカルなもの、狭いけれども深い世界。その産物のひとつが昔野菜だ。

 きのうは快晴ながら、風が強かった。それでも隠居の室温は朝10時前でちょうど零度。風は冬でも光は春だ。平地の小川・片石田では道路沿いの庭で紅梅が満開寸前だった。それよりちょっと高い高崎の白梅は咲き始め、溪谷では花芽のまま。手のひらに載るような小さな流域の上下流であっても、雪の残がいや植物が風土の違いを教えてくれる。

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