夏井川渓谷の隠居の庭で三春ネギと辛み大根を栽培している。正確には、辛み大根は“自生”に近い。不耕起のうえに、ほとんど手をかけない。
初夏に種の入ったさやを回収する。が、あまりにも数が多いので、いつも途中でさや摘みをやめる。あとは枯れるがまま。枯れた茎だけになった夏、引っこ抜いて片付ける。
さやは、近年は袋に入れたままだ。まけば芽が出るのはわかっている。しかし、取り残したさやも、初秋になると土に帰って発芽する。
ある年、月遅れ盆が終わって種をまこうとしたら、すでに10株ばかり双葉が出ていた。それで、辛み大根は「ふっつぇ」で増えることを知った。
「ふっつぇ」は「自然に生まれた」を意味するいわき語。シソやミツバもこぼれ種から生える「ふっつえ」だ。
以来、辛み大根は種をまかずに、「ふっつぇ」で出てきたものを育てる。といっても、周りの草を1~2回引き、気が向けばパラッと肥料をまく。その程度のことはする。
今年(2025年)は「ふっつぇ」の発芽が旺盛で、菜園の3分の1を埋めるほどになった。
三春ネギの苗づくりに失敗したので、例年だとネギのうねをつくるあたりでも発芽した。それもそのままにしておいた。
なかには広く大きく葉を広げ、周りの葉を覆い隠すものも現れた。11月末に根元の土をほぐし、根がどのくらい肥大しているかチェックした。
11月最後の日曜日、根元が4センチ、長さ15センチほどの「むっくり」形を初収穫した。大根おろしにすると辛かった。師走に入ると、辛み大根はさらに肥大する。
2年前、普通の大根のように太くて長い辛み大根が採れた(ずんぐりむっくりも、もちろんあったが)。
それぞれおろしにして味を比べた。ずんぐりむっくりはとても辛い。なのに、立派な大根は辛みに強弱がある。どちらかというと、辛みが弱い。
大根はアブラナ科だ。アブラナ科の植物は交雑しやすいという。いつの間にか普通の大根と交配して、形質が変わってしまったのかもしれない。
で、根元に指を突っ込んで土をかき分け、大根の首をつかんでねじるようにして引っこ抜くと、すぐ形状を確かめる。
この冬はまだずんぐりむっくり形が多い=写真(細いのは未熟なまま終わった「ふっつぇ」)。そのための不耕起栽培だからそれでいいのだが、やはり太くて長いタイプだと喜んではいられない。
もともとはもらいものである。震災翌年の2012年夏、豊間で津波被害に遭い、内陸部の借り上げ住宅で暮らしながら、家庭菜園に精を出している知人(女性)から、種の入ったさやが届いた。種はもともと会津産だという。
原発事故が起きて、三春ネギ以外は家庭菜園を続ける気持ちが萎(な)えていたころだった。よし、辛み大根で再出発だ、となったのだった。
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