朝ドラ「ばけばけ」の主題歌は「笑ったり転んだり」。で、その逆をブログのタイトルに付けてみた。「泣いたり起きたり」
歌詞に「泣き疲れ眠るだけ」とある。ま、「泣いたり笑ったり」「転んだり起きたり」の慣用句をもじっただけだが。
NHKは祝日になると、平日とは異なる番組を流す。3月20日の春分の日。早朝6時過ぎにテレビをつけたら、ニュースではなくトーク番組をやっていた。
朝ドラ「ばけばけ」の主題歌を歌うハンバートハンバートに、「ばけばけ」の出演者が加わって、主題歌の誕生秘話などを紹介していた。「ハンバートハンバート『笑ったり転んだり』を語ったり」で、再放送だった。
朝ドラの演出スタッフがハンバートハンバートに主題歌を依頼する。注文は一切つけない。
小泉八雲の妻セツが書いた『思ひ出の記』を読み、ゆかりの土地(松江など)を巡って触発されたものを作品にしてほしい――それだけだった。
依頼したスタッフの胸中には、詩人山之口貘(沖縄出身、1903~63年)の詩「賑やかな生活である」があった。そんな詩の世界をイメージしていたが、そのことは口には出さなかった。
スタッフが出来上がった作品を試聴すると、思い描いていたイメージとぴったり重なった。聞いているうちに涙が流れたという。
ああ、心に響いたのだな、と思った。最終回前の最後のバンセン(番組宣伝)だとしても、そこからドラマづくりが始まったのだ、そういう信頼関係がドラマづくりの根底にあったのだ、という感慨がわいた。
山之口貘の「賑やかな生活である」の冒頭部分が紹介される。「誰も居なかったので/ひもじい と一聲出してみたのである/その聲のリズムが呼吸のやうにひゞいておもしろいので/私はねころんで/思ひ出し笑ひをしたのである/(以下略)」
貧乏でも貪(どん)しない。「ひもじい」と口にした自分を、その言葉の響きを、もう1人の自分が面白がる。
ハンバートハンバートの「笑ったり転んだり」にも、日常を客観化しながら、それに押しつぶされまいとする意思が感じられる。
出だしからしてそうだ。「毎日難儀なことばかり/泣き疲れ眠るだけ/そんなじゃダメだと怒ったり/これでもいいかと思ったり/(以下略)」
前にその2番目の出だし、「日に日に世界が悪くなる」を紹介した。「野垂れ死ぬかもしれないね」「帰る場所などとうに忘れた」といったフレーズは、長年放浪生活を続けた山之口貘の人生とも重なる。
スタッフが流した涙は、主題歌と貘の貧乏暮らしの詩が共振したからだろう。ついでながら草野心平と山之口貘は詩友であり、酒友でもあった。
NHKはこの日の夕方6時過ぎから、また「ばけばけ」のスペシャルトークショーを放送した=写真。
おかげで山之口貘の詩と、「ばけばけ」の歌詞に、同じ日の朝と晩、じっくり向き合った。
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