2010年10月22日金曜日

キノコは美しい


生まれたばかりの人間の赤ん坊は、はっきりいってかわいいとは思わない。しわくちゃで、赤ら顔。だから赤ん坊だが、それが半年もたって人間らしい顔になると、なんてつるんつるんしているんだろう、なんてかわいいんだろう――となる。

つるんつるんとした、そのほっぺたを指でつついてみる。弾力がある。腕や足をさわる。やはり弾力があってみずみずしい。キノコに関しても、そんな感情を抱きたくなるときがある。

立ち枯れの木の根元にナラタケが群生していた=写真。発生したばかりだ。こちらは人間、いや動物とは違うから、最初からつるんつるんとしている。雨にもぬれず、風にも吹かれず、多少はその洗礼を受けたかもしれないが、見た目は無垢のまま。二十数年ぶり、どころか三十年ぶりくらいに遭遇した、美しい姿だ。

「美少女」だの、「美人」だのと、ついオーバーにたとえて書きたくなる癖がある。が、ここまできれいだと、そんな形容語はいらない。キノコは美しい。ただ、それだけ。

ナラタケの、きれいなかたまりの三分の二をこそげとった。残りは何日かたつと大きくなるだろう。ころあいをみて、また摘みに行く。他人に採られてなくなっていてもかまわない。キノコ採りはおたがいさま。自分のシロは他人のシロでもあるのだから、〈遅かったか〉で終わるだけだ。

帰宅してすぐ、下ごしらえをした。柄に触れながら、つばの下の硬い部分を折り取った。硬い柄を取るのは、消化不良による下痢対策だ。ゆでて、水に冷やして、大根おろしにしたらうまかった。

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