2010年10月2日土曜日
心平がゆ
台湾旅行では、食事には不自由しなかった。特に、ホテルの朝食は洋・中・和あり。昨年の北欧旅行ではご飯やみそ汁が恋しくなったが、台湾では食事でストレスがたまるようなことはなかった。逆に一日1キロ、体重が増えた。帰国する4日目の朝、ホテルのバスルームに備えられてある体重計に乗って分かった。
台湾最初の朝、ホテルの食堂=写真=に入った。パッと目についたのは洋の食べ物だ。パンを取り、サラダを取り、ジュースを取りして食べた。が、ご飯を食べている人もいる。ご飯が食べられるのだ! 同室の人間と早速、ご飯とみそ汁、たくわんを取って食べた。かゆがあることも知った。
ご飯を食べたことをガイドの青年にいうと、笑われた。「中国人は、朝はおかゆかパンですよ」。そのとき、腑に落ちるものがあった。詩人の草野心平がつくる「心平がゆ」というものがある。なぜ心平とかゆなのか、が納得できたのだ。
心平は若いときに嶺南大学で学んだ。終戦までの5年余は、南京政府宣伝部顧問として中国で暮らした。中国の食文化がしみついていた、といってもいいだろう。われわれが病気になったり、二日酔いになったりしたときにかゆを食べる、なんていうレベルの話ではない。おそらく毎朝、かゆを食べていたのだ。
その「心平がゆ」だが、レシピはこんなものらしい。コップ1杯の生米と同量のごま油に15倍の水を加えてコトコト煮る。このかゆを心平自身から伝授されたのが作家の檀一雄と作曲家の團伊玖麿だったと、かつて心平の女性秘書さんから聞いたことがある。天山文庫では、朝はおかゆかパンだった、とも。
いわきでも「心平がゆ」を口にできる機会がある。11月12日の心平忌に合わせて「心平を語る会」が心平生家で開かれる。そのとき、必ず「心平がゆ」がふるまわれる。一度口にしたことがある。
「心平がゆ」を思い出したこともあって、台湾三日目と翌最終日の朝はおかゆにした。多少アルコールが残っていたせいもある。たった四日だったが、おかゆが中国人の、あるいは台湾人の食生活に重要な位置を占めている、ということがよく分かった。
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1 件のコメント:
天山文庫のある川内からです。
はじめまして。心平がゆは何度か作りました。僕は日記刊行会のs氏から伝授していただきました。少し大げさですね。
今年は23回忌の法要を長福寺で開催されます。無宗教であった草野心平さんですが、般若心経は上げていただくそうです。今後は毎年「かえる忌」として継続していくそうです。11月6日の土曜日に行われるそうです。機会がありましたら是非お出でください。
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