2010年10月27日水曜日

コピアポ石


「コピアポ石(せき)」というものがある。いわき市立草野心平記念文学館で開催中の「草野心平と石」展で知った。心平の収集した石とは、直接の関係はない。関連展示の「いわきの鉱物」コーナーで、いわき産の一つとして紹介されている=写真。小瓶に入っていて、粉状で黄色っぽい。ラベルに「平南白土」とある。採集地だ。

企画展開催二日目の10月10日に観覧し、15日に知人を連れて再び文学館を訪れた。2回とも、鉱物に詳しい副館長から詳細な説明を受けた。

なぜ、コピアポ石か。チリの鉱山落盤事故が起きて、33人が地中深く閉じ込められていた。新聞は連日、コピアポから送られてくる特派員の記事を掲載した。無事に33人が救出されるように、という願いを込めて、「いわきの鉱物」コーナーの最上段、中央に飾られたのだった。

読者としては【コピアポ(チリ北部)】なんていう新聞記事のアタマは無視して本文に入るから、今、最も注目されているところと言われても分からない。副館長に教えられてやっと、チリ―落盤事故―コピアポがつながった。地下634メートルに閉じ込められた鉱山労働者33人が全員、2カ月余ぶりに2日がかり(13、14日)で救出された、その前後だった。

ハリウッドが好む、極限状況での生の帰還には違いない。それについてはだれもが承知の助だからふれない。が、落盤事故をたびたび起こすような保安体制の不備を指摘する声がある。むしろ、こちらの方に耳を傾けたい。

話は変わるが、今度の事故の報道に刺激されてパブロ・ネルーダの詩を再読した。少し心が潤った。

チリの10月は春の真っただ中。〈おれの祖国では 春は/北から南へとやって来る その香りとともに/コキンポの黒い石や/あわ立つしかめっつらした水辺をたどり/痛めつけられた群島までやってくる〉。コピアポはコキンポの北にある。そこではコキンポ以上に春が沸騰していることだろう。

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