2010年10月30日土曜日

芽生え


週末、夏井川渓谷の無量庵ですごすようになって、15年余がたつ。そこで、ネギ(三春ネギ)の種を採り、保存し、まいて、育てている。

私は無量庵の、週末だけの管理人。無量庵は亡くなった義父母が隠居家として建てた。その無量庵へ通い始めたころ、地元の集落の古老の家に呼ばれて酒に沈んだ。古老の家で目が覚めたら、ジャガイモとネギのみそ汁が出てきた。そのとき、覚醒した。〈これだ、このネギだ、小さいときに食べて甘かったネギは〉

「三春ネギ」だという。カミサンのつくる、ネギとジャガイモのみそ汁は味気がない。「おふくろのつくるみそ汁とは味が違うな」「私はあなたのおふくろじゃない!」。ネギの品種が違うことが、そのとき初めて分かった。

以来、古老の家からネギ苗をもらい、種を採り、失敗を重ねながらも、毎年10月10日前後に「三春ネギ」の種をまいている。ながらく「体育の日」の祝日だった。目安にするには分かりやすい。わが父親の誕生日にして命日でもある。今年もその日に種をまいた。それが芽を出した。

去年、小瓶に入れて冷蔵庫にしまい忘れていた種もまいた。ネギ坊主から採種して1年半がたっている。乾燥剤が効かなくなったのか、一部カビが生えていた。期待しなかったのだが、こちらも芽を出した=写真手前。冷蔵庫に入れておけば、2年目でも芽の出ることが分かった。

毎年、なにか違うことを試みる。おととしは苗床に寒冷紗を張った。去年は(いや、今年の春先までだが)こまめに追肥をした。今年は「ばらまき」ではなく「すじまき」にした。密植だと育ちの悪い苗が多数できる。それを避けたのだ。

2年目の種をまいたのも、結果的に試みの一つになった。あるところで三春ネギの話をしたら、「種が欲しい」と言われた。かびた種をやるわけにはいかない。悩んでいたのだが、大部分の種は生きていた。

多めに種を採り、冷蔵保存をしていれば、少なくとも2年間は持つ。乾燥剤を入れて、こまめに乾湿状態をチェックすることで、希望する人に種を配ることもできる。それが今年の“研究成果”だ。

0 件のコメント: