2010年10月26日火曜日
モグラ君、こんにちは
庭の刈り草片づけにくたびれたので、ベンチにまたがり、テーブルにひじをつけて休んでいたら、足元を動く黒いかたまりが目に入った。頭胴長およそ7センチ。ノネズミか。いや、それにしては頭をもさもさしながら、苔のあいだにできたジグザグ道を行ったり来たりしている。
テーブルとベンチといっても、厚めの板3枚(それがテーブル)を丸太の脚4本で支え、同じ厚めの板に太めの枝4本を差し込んで脚にしたベンチが4つあるだけ。川内村の知人がつくった。テーブルも、その脚も長年、風雨にさらされ、腐朽が進みつつある。脚にも、板にもキノコが出はじめたので、それと分かる。
ぼろぼろになりつつある、その脚の底に黒い塊がもぐりこんだ。と、そこからとがった肉色の鼻をひくひくさせては、出たり入ったりしている=写真。モグラ、ではないか。どうした、こんな日中に。しかも、モグラ道はほとんど地上に生えている苔をならしただけにすぎない。土の中にもぐっていかないのだ。
モグラは畑の地中に道をつくる。地表すれすれのところでは、土が割れて盛り上がる。それで、野菜の根が宙に浮き、枯れることがある。モグラは畑の邪魔者だ。
が、地上でうごめく姿はおどおど、びくびくしていて、モグラは絶えずベンチの脚の底から出たり入ったりしている。カメラのシャッター音にも驚いて脚の底に引っこむ。
曇天、夏井川渓谷の無量庵。初めて見るモグラ(ヒミズか)に心がときめいた。カメラをとりにその場を離れたあとも、モグラの堂々めぐりは続いた。それをパチリとやると、やっと、モグラ君、こんにちは――そんな気持ちになった。やがて彼は草むらに消えた。
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