2012年8月13日月曜日

割りばしのような人


田村市常葉町のメーンストリート(というほどのものでもないが)は国道288号。いわゆる「一筋町」で、道の両側に家が張りついているだけ。山を抱えた通りの北には畑、反対側の南には田んぼが広がる。田んぼの先に大滝根川が流れる。

国道は郡山市と双葉町を東西に結ぶ。町の一角にある道路標識=写真=が、田村市から原発が近いことを物語る。

わが実家はこの道路沿いにある床屋。着いたらすぐ、兄が私の散髪を始めた。隣のいすに80歳を超えたおばあさんが座っていた。義姉がおばあさんの染髪、顔そりを終えるところだった。終わって、待合コーナーに戻ったあとのおばあさんの言葉がおもしろかった。

義姉と雑談になり、ざっと60年前の結婚のいきさつを語った。「たあだ結婚させられたんだ」(聞いてニヤリとするしかない)。わが実家の隣の家から出た大工さんがいて、縁談をまとめたのだという。で、親と親とが合意した。本人は結婚披露宴の後に、初めてご主人の顔を見た。「割りばしのような人だった」(巧みな比喩に爆笑)。やせていたのだろう。

おばあさんが店に来るようになったのは、3・11後だという。自宅は都路町の、双葉郡との境にある。原発事故のせいで常葉町の雇用促進住宅に避難した。最上階の5階だった。エレベーターがないから、上がり下りがこたえた。で、常葉の西隣の船引町の仮設住宅に移った。ご主人はそこで亡くなった。

船引に移っても、息子さんの車でわが実家へ散髪にやって来る。義姉は同じ都路町出身。同郷のために話が合うのかもしれない。

息子さんが線量計を買って自宅の内外を測定した。「線量があって(高くて)住めねぞっていうんだ」。きょう(8月13日)は盆の入り。おばあさんのご主人の新盆は、都路の自宅ではなく、仮設住宅で行われる。

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