夏はぬか漬け、冬は白菜漬け=写真=をつくる。漬物がないと食事をする気になれない。で、いつからかわが家では、私が漬物をつくるようになった。
毎日、ぬか床をかきまわす。食材は、今はキュウリが主体だ。夏場は酸味の濃い古漬けにする。それで食欲が増進される、と思っていたが、別の理由もあるのかもしれない。
北海道で市販の浅漬けによる食中毒事故が起きた。現時点で5人が亡くなっている。白菜の切り漬けになぜO157がひそんでいいたのか。可能性として①野菜の泥についた菌が消毒されなかった②牛ふんでつくる堆肥の熟成が不十分だと菌が生きている――きのう(8月21日)の読売「スキャナー」が、食中毒発生のメカニズムについて触れていた。
併せて、①ぬか漬けはPH(水素イオン濃度)が3.5程度と酸性が強く、雑菌の繁殖を抑える②が、近年は減塩ブームで、酸味の強い漬物も敬遠される傾向がある。浅漬けは塩分濃度2~3%、PH5程度と酸性度が低く、菌が入ると増殖を防ぐのが難しいとみられる――ことも紹介していた。
ぬか床をかき回すことで乳酸菌の好きな空気を補給できる。乳酸菌による「発酵」が続いているかぎりは、「腐敗」は起きない。雑菌の繁殖も抑えられる。夏場、体が酸味の強いものを求めるのは食中毒予防のためでもあったか。
食品メーカーによる「漬物」は、私には「漬物もどき」、あるいは「工業製品」にしかみえない。自分でつくるぬか漬け、白菜漬けとは、味や歯ざわりがかなり違う。やむを得ず買うのは、次のような場合だ。
漬物にも“端境期”がある。ぬか漬けから白菜漬けへ切り替える晩秋と、白菜漬けからぬか漬けへバトンタッチをする晩春、自家製の漬物が欠ける。パック入りの浅漬けを買う。その場合でもほとんど、「発酵食品」と明記されたキムチにする。「キムチもどき」は避ける。
こんどの浅漬け食中毒は看過できないほどの衝撃をもたらした。家庭という小さな空間に息づいていた漬物文化が溶解し、それを代行するメーカーの製造システムも完全ではなかった。リスク覚悟で浅漬けを食べる、なんてことは、あってはならないことだ。消費者は自衛しようがないのだから。
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