田村市常葉町の実家へ行ってきた。実家は床屋。兄夫婦がやっている。要するに、散髪目的の帰省だ。昨年6月以来だから1年2カ月ぶりか。
途中、いわき市の夏井川渓谷にある無量庵へ寄り、谷風の通る部屋で少し涼んだあと、菜園に生ごみを埋めて実家へ向かった。除染作業を告げる立て看、仮置きされた残土……。1年余前にはなかった新しい光景に、放射性物質と苦闘する住民の思いが重なった。
道行きの出発点となった無量庵に、8月1日付いわき市小川支所発の回覧チラシ「クマにご注意」=写真=が差し込まれていた。その話から始めたい。
おとといの小欄「ミンミンゼミ」で、溪谷の上流、川前町でツキノワグマの足跡が確認されたことを書いた。川前町に隣接する小川町も当然、要注意地区になった。それを頭に入れての帰省、いやチラシを手にしてからはもっと具体的に注意をしながらのドライブになった。
チラシは当然ながら、2日付いわき民報の記事より詳細だ。7月31日に足跡目撃情報が寄せられ、翌8月1日に現地を調査してクマの足跡であることが確認された。で、チラシには①出合わないようにするための心構え②出合ったときの対処法――が書かれている。
なかで注意を引いたのが、「クマは夜間や朝夕など活発に行動するため、特に注意が必要。朝早くの農作業等は、必ず音のするものを身につける」というくだりだ。出没時間はイノシシと変わらないではないか。クマは、イノシシよりは気楽に人里に現れる、ということを頭に入れておかないといけない。
3・11後、福島県内でイノシシを捕る人が減った。肉から放射性物質が検出されるようになったからだ。クマについても同様だろう。もともと阿武隈高地にはクマは生息していない、というのが定説だった。それが、ずいぶん前から目撃情報が増え、周回しているらしいことがわかった。
この数年の間に、山間部の三和や田人にクマが現れたという情報が寄せられている。原発事故以来、場所によっては山から人の姿が消えた。山離れ現象も起きていた。イノシシが山の王者になりつつある。クマもおずおずと阿武隈に入りつつある、ということか。
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