2017年12月16日土曜日

半自生の辛み大根

 耕さない。種の入ったさやは採らずにそのままにしておく。自然に落下する。すると、初秋に発芽し、師走には根っこがずんぐりしてくる――。
 夏井川渓谷にある隠居の庭で辛み大根を栽培している。去年(2016年)、“こぼれさや”から発芽したのを見て、今年はさやを収穫せずに、辛み大根自身がいのちを再生産する様子を見ることにした。半分手抜き、半分自生の力を信じて。結論からいうと、辛み大根の生命力はすごい。カブラヤガの幼虫やアオムシにかなり食害されたが、菜園の一角を葉で覆っている=写真。

 おととしまでは収穫し、保存しておいたさやを割って種を取り出し、土を耕して普通の秋まき大根と同じように、点まきにした。そんな手の込んだやりかたは、辛み大根には不要だった。
 
 辛み大根は煮ても漬けても硬くてまずい。辛みを生かしておろしにする。耕したら、すらりとした大根ができた。これではおろしにもできない。で、耕すのをやめたら、見事なほど根がずんぐりむっくりに肥大した。ストレスを与えるのがいいらしい。
  
 今年、さやを放置して、一斉に芽生えたのを見たとき、山形県鶴岡市の「温海(あつみ)かぶ」が思い浮かんだ。この伝統野菜は焼き畑農法で生産されている。山の急斜面を焼いて、灰が熱いうちに種をまく。野性が強いという点では、辛み大根も負けない。

 ざっと3週間前になる。日曜日朝、たまたまNHKのテレビを見ていたら、「うまいッ!」の時間になった。「温海かぶ」を取り上げていた。ゲストはいわき昔野菜保存会とも縁の深い江頭宏昌山形大農学部教授だ。いわきでの講演を聴いて、承知はしていたものの、急斜面に“群生”する「温海かぶ」に、今度はわが菜園の辛み大根が思い浮かんだ。

 早春の雑木林にカタクリやニリンソウが群生する、そのにぎわいぶりと似ている。一面の「温海かぶ」、規模は小さいが一面の辛み大根。改良された野菜は“家菜”だが、辛み大根は山菜に近い野菜ではないだろうか。

 先日、根元をさわったら500円玉くらいに肥大していた。お茶の入ったペットボトルくらいになると採りごろだ。あした、1本を試しに引っこ抜いてみよう。

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