日曜日(12月3日)は、車であちこち動き回った。いわき市三和町(ふれあい市場で買い物)~同差塩(さいそ)/川前町(山越え)~小川町(夏井川渓谷の隠居で土いじり)のあと、平・久保町(カミサンの実家)へ。
あとは家に戻るだけ、という段になって、用事を思いだした。内郷の「ライオン岩」を見ておかなくては――。カミサンは「家へ帰ってよ」と口をとがらせる。「確かめたいものがあるんだよ」。午後3時すぎに白水(しらみず)町のライオン岩を眺め、白水阿弥陀堂を訪ねてから、魚屋へ直行した。
ライオン岩は石城砂岩層からなる小丘群のひとつで、山岸を巻くように白水川(新川)が流れている。砂岩層の下に石炭層が眠っている。いや、炭鉱が閉山した今は「眠っていた」というほかないか。小丘の谷間に「みろく沢炭鉱資料館」がある。「常磐炭田の祖」片寄平蔵が石炭層の露頭を発見したのもこの辺だ。さらにもうひとつ隣の谷には、白水阿弥陀堂境域が広がる=写真。
白水阿弥陀堂は平安時代の末期に建立された。福島県内唯一の国宝建築物だ。堂内に安置されている阿弥陀三尊は国重文で、周囲の丘の稜線と南方の白水川を境界とする境域が国史跡に指定されている。平泉の「仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」が世界文化遺産に認定されたように、白水のこの浄土式庭園も世界の、人類の財産だ、と私は思っている。
浄土式庭園と俗界をつなぐ「心字の池」の赤い反り橋に立ったころ、3時半になって門が閉められた。その時間を過ぎても、阿弥陀堂を見に来るカップルなどが絶えなかった。さすがは“世界遺産”級の聖地だ。
「震災が起きたあと、ここへ来て祈ったよね」。カミサンにいわれて思い出した。東日本大震災から2カ月ほどあと、常磐へ行った帰りに白水阿弥陀堂を訪ねた。拝観料を払い、寺のガイドさんの案内で見て回りながら大震災の死者を弔い、原発事故の収束を念じた。あんなに心の底から手を合わせたことはなかった。
あした(12月8日)、「新川バーチャルツアー」と題した小さなイベントがある。<新川流域散歩>と名づけて15分ほどしゃべる。水源の三大明神山からしみ出た水の一滴になったつもりで、平の街はずれ、夏井川との合流点まで流れ下り、流域の自然・歴史・文化を語る。流路は短いが、流域の時間の層は厚い。ライオン岩も木が茂ったために、プードルのようにかわいくなっていた。
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