カオス*ラウンジ新芸術祭2017市街劇「百五〇年の孤独」と銘打った展覧会がきのう(12月28日)、いわき市泉地区の民家などを会場に始まった(年明け1月からは金・土・日・祝日の開催で、1月28日が最終日)。
この展覧会を企画・演出した美術家・美術批評家黒瀬陽平さんによると――。ざっと150年前、明治政府は最初にして最大の宗教改革、「神仏分離令」を出す。その結果、泉藩内ではおよそ60あった寺院が「廃仏毀釈」によって姿を消した。これまでに復活したのはわずか2寺だけ。「泉は廃仏毀釈からの復興に『失敗』した」
「ぼくたちは一年間、泉の街を歩いてみた。かつて寺院だった場所を全てめぐり、その街並みや風景を見た」。なんと! “悉皆(しっかい)調査”をしたのだ。
で、「わかったことは、かつての『復興の失敗』は、現在の街並みや風景にも、確かに影を落としている、ということだ。生者と死者の関係が変われば、街も変わる。150年の孤独のなかで、ゆっくりと変わっていく」。展覧会名はこの認識を踏まえたものだった。
悉皆調査という基盤の上に、“まち歩き”(コミュニティツーリズム)の手法を取り入れて、各所に配された作品を見て回る。3年前、平地区で実施したのが始まりだが、私としては今回初めて全体像を頭に描くことができた。というのも、主催者の一人が旧知のE君で、「ぜひ見に来てください」というので、初日午前10時に第一会場へ出かけた。
泉地区はJR泉駅の両側が区画整理をされて、いわき市内でも一番の人口集中地区に変貌した。「いや、人口爆発地区です」とE君はいう。泉地区は車で通り過ぎるか、たまに画廊を訪ねるくらいで、土地勘はまったくない(若いとき、友人の叔父宅へ友人と何度も飲みに押しかけたが、夜の訪問だったために場所を覚えていない)。
少し遅れて地元在住のY君が第一会場へやって来た。偶然の顔合わせだ。ここは一緒に巡るのが一番。E君の案内で歩き始めると、「ここはこう、あそこはこう」と、E君とY君が即興でささやいてくれる。おかげで泉の150年前の“断片”が少しだが見えてきた。
第一会場は駅の北側にあるzitti(ジッチ)=写真。震災前、何度か訪ねたことがある。「家主は?」と聞けば、居合わせた黒瀬さんが「川内です」という。川内・獏原人村のK氏が主催するイベントによく参加しているから、すぐピンときた。K氏がらみのフェイスブックにときどき写っている。村の真ん中にある旧保育所=「町分オルタナギャラリー」にでも行ったのだろう。
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