1年に1回のお付き合い――といった感じで、常磐共同ガスが主催している「ガスワンふるさと教室」の講師を引き受ける。今年(2017年)はきのう(12月9日)午後、「太平洋戦争と大本営発表」=写真=という題で話した。前日がジョン・レノンの殺された日、いや太平洋戦争の始まった日、ということを意識してテーマに選んだ。
東日本大震災に伴う原発事故がおきたとき、マスメディアは国・東電の発表を右から左に垂れ流すだけ、「大本営発表」ではないかと批判された。では、実際の大本営発表はどんなものだったのか。地域紙でメシを食ってきた人間として、研究書や当時の新聞を収録した本に当たって調べたのがテーマの半分の動機になった。
もうひとつの「太平洋戦争」は――。10年前、故里見庫男さん(いわき地域学會初代代表幹事)にいわれて、開館したばかりの野口雨情記念湯本温泉童謡館で「文学教室」を担当した。毎月1回、童謡詩人について調べて話した。大正ロマン・昭和モダンを軸にした文化史、広くはいわきの近代史に興味がわいた。その延長で吉野せいの『洟をたらした神』と戦争の関係について調べている。
私は戦後生まれだから、日中戦争やアジア太平洋戦争を体験しているわけではない。が、受講者の何人かは戦前・戦中生まれだった。
話が終わって質問タイムに入り、さらにそのあとのお茶会で94歳のおじいさんと話した。今回が初めての受講だという。真珠湾攻撃が行われた日、炭鉱で働いていた。そのあと、戦場へ駆り出された。「軍隊は“運隊(うんたい)”です。運よく生きて帰って来ました」。いろいろ話しているうちに、おじいさんの目頭がぬれてきた。ああ、この人にとって戦争はまだ終わっていないのだな、と感じた。
日中戦争で「おやじが南京に一番乗りをした」という人もいた。旧知のおばさんからは、今読んでいる小説の話を聴いた。あとで電話がかかってきた。盛田隆二という人の『焼け跡のハイヒール』という本だという。さっそく、図書館のホームページでチェックしたら、「貸出中」だった。いつか借りて読むことにする。戦争はやはり、体験者の話の方がグッとくる。
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