2017年12月2日土曜日

アート・地域学・水環境

 震災後に生まれた動きのひとつにはちがいない。いわきでは主に平と小名浜で、アートとまちづくりを結びつけた活動が続いている。中心は30~40代の若者だ。人的なネットワークができている。いわきの文化史的な視点でいえば、ざっと40年(正確には47~33年)ぶりのアートの波といえるかもしれない。
 最初の波とは――。昭和45(1970)年・草野美術ホールオープン~同50(1975)年・市文化センター開館~翌年・市民団体「市民ギャラリー」結成~同59(1984)年・市立美術館開館と続く、現代美術の受容と展開の歴史だ。
 
 アートだけではない。市立美術館の開館と同じ年に、学術系の市民団体・いわき地域学會が発足する。その後、ごみ処分場やゴルフ場建設問題、旧炭鉱坑道への廃油不法投棄事件などが起き、いわき市内の水環境に危機感をもった市民が立ち上がる。原動力になったのは、やはり30~40代だ。
 
 そうした状況のなかでいわき民報は年間企画として、昭和63(1988)年の夏井川を皮切りに、鮫川、藤原川の「流域紀行」を連載し、水源の「あぶくま紀行」、河口=沿岸部の「浜紀行」を手がけた。いずれも地域学會のメンバーが交代で執筆した。これらは単行本になった。
 
 本にはなっていないが、平成2(1990)年には好間川と大久川の「流域散歩」を半年ずつ手がけ、平成7(1995)年には1年間、「しんかわ流域誌」を連載した。
 
 新川の連載から22年。最近、「しんかわ流域誌」の切り抜きを読み返している。平成2年にまちづくり応援団「いわきフォーラム’90」が発足し、1年間の活動記録をまとめた『流域論からの出発――いわきのまちづくりに向けて』も=写真。水環境問題には、行政的な「地域」ではなく「流域」の視点をもたねば、というのが骨子の小冊子だ。
 
 9月に新川の水環境に関するワークショップが開かれた。三春町にある福島県環境創造センターが主催した。連絡がきて参加した。来週金曜日(12月8日)にはその延長でちょっとしたイベントがある。公開しているわけではないが、ワークショップ参加者の家族や友人2~3人は聴講可だという。

 イベントのタイトルは「歴史・文化・環境などの魅力を再発見!?新川バーチャルツアー」。私と、旧知の橋本孝一さん(夏井川流域ネットワーク代表=福島高専名誉教授)がそれぞれ15分くらいしゃべる。

 新川の水環境はよくなっているという印象があるが、河川一般に対する県民の認識はどうだろう。原発震災が川から人を遠ざけ、県民の水環境への関心の低下が懸念される、という危機感が行政にはあるようだ。再び、流域論の出番がきた?

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