2010年1月23日土曜日

平潟港の猫


北茨城市の天心記念五浦美術館で開かれている小林巣居人展を見に行ったときのこと。

午前中はカミサンが小名浜のある寺のイベントに参加し、正午前に終わったところを拾って南下した。イベントで売っていた弁当が昼メシだ。途中のコンビニであったかいお茶を買い、平潟港へ直行した。そこで弁当を食べた。

港の市場ではせりの真っ最中だった。車が駐車場に並び、場内では人がうごめいていた。岸壁ではクレーン車が漁船から漁網をつり揚げ、別の漁網を船につり降ろしていた。漁業関係者の邪魔にならないような場所に車を止め、さあ弁当を食べようかという段になって、一匹の猫がどこからともなく近づいて来た。

「ミャー、ミャー」と鳴いても無視――を決めようとしたら、カミサンが弁当か何かから食べ物をやった。が、それにはちっともくいつかない。やさしくすると猫はすぐ調子に乗る。いや、調子に乗るどころか、車のボンネットに跳び上がり、フロントガラスに乗って別のえさを催促し始めた=写真

こちらは再び無視。カミサンは喜んで外に出て食べ物をやる。が、やはり口にしない。港の猫と町の猫とでは、食習慣が大きく違ってしまったのだろうか。町の猫のえさはもうすっかりキャットフードだ。港の猫はどうか、まだ生の魚を食べているのか。そんなことを考えながら、弁当を食べ終わった。

港の防波堤には釣り人が鈴なりだ。海の猫が港の上を飛び交っている。魚市場の活気とは別の、のどかな日曜日の光景だ。そこに現れた猫はしかし、野良なのか車のそばから離れない。

人間のえさなんか食べられるか、でも腹はすいているのだ、とでもいったふうに。おまえの気にいるようなえさはないよ――そう胸の中でつぶやいて港を後にした。

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