2011年2月15日火曜日

テレビのない日々


テレビを見なくなってほぼ半月になる。画面にカラーの縦縞が現れ、オーロラのように目まぐるしく変化する、これは寿命か――テレビを買った店(わが家の“家電のホームドクター”)に連絡したら、本体を持って行って台だけになった=写真。直してくれるのだろう。

テレビを早く見たい。修理するのはいいが、新品より高くつくなら買い換える――とは言ってある。今のところそんな連絡はないから、こちらに負担はかけない、という覚悟はあるのだろう。なにしろ、何年か前に「新中古」をいい値段で買った。その値段に見合ったサービスはしてもらわないと。

と、最初は思っていたが、テレビがない生活に慣れたら、勝手なことだが、テレビは人をバカにする、そんなことを思い始めた。テレビに代わってラジオを聴き始めたからかもしれない。

ラジオは、団塊の世代にとっては必須のメディアだった。受験勉強を支える「深夜放送」というものがあった。それで、「ながら族」が誕生した。テレビが入り込んでからは、すっかりラジオから遠ざかった。週末、夏井川溪谷の無量庵でラジオを聴くだけになった。

わが家でもラジオを聴き始めて、ずいぶん面白いメディアだと再認識した。少なくとも、テレビのようにバカになる、という思いは抱かないですむ。いや、耳からしっかり言葉が入ってきて、いろいろ深く考えるきっかけにはなる。それを実感している。聞き流しているようで、面白いことがあると言葉が耳の奥深くにとどまるのだ。

映像が主体のテレビは物に即してわかりやすく伝えながら、結果として時間を消費するだけという印象をぬぐいきれないのだが、ラジオは言葉による想像力を必要とする人間の生理に合っているのかもしれない。

こういうことがあった。同じNHKのテレビとラジオだ。冬の乾燥肌について、同じようなことを教えてくれたのだが、テレビ(あさイチ)は瞬間的にはわかっただけで記憶化されない。ラジオは「アカ(垢)・アセ(汗)・アブラ(脂)」が大事――専門家の言った言葉がすんなり耳に入って、今も脳みそにとどまっている。

せっけんで体を洗うのは2~3日に一度でいい、アカ・アセ・アブラが乾燥から肌を守るバリアー役を果たしているという。私もどういうわけか、冬は自然とそうなる。動物的な本能がそうさせるのかもしれない。

作家の池波正太郎さんも同じようなことを言っていた。「風邪を引きそうだなと思ったら、背中をせっけんで洗わない。風邪は背中から引く」

ラジオの妙味がこんなところにある。にしても、早くテレビが見たいと、もう一人の自分が言う。

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